かーくんとしょー

ラブソングができるまでのかーくんとしょーのネタバレレビュー・内容・結末

ラブソングができるまで(2007年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ヒュー・グラント目当てで動画配信サービスで鑑賞。
ヒュー・グラントは落ち目の80年代ロックアイドルの役で、彼に作曲で再起のチャンスが舞い込み、ドリュー・バリモア演じる作詞家と共に曲作りに奮闘するストーリー。
作品開始直後、MTV風に流れる往年の映像(という設定の映像)は最高にシュールで、否が応でも笑いの期待値を上げてくれる。

ラブコメディーなので多少のご都合主義はご愛嬌だが、たまたま代員として植木の水やりに来たハウスキーパー的なドリュー・バリモアが、たまたま口ずさんだ歌詞がとても良くて……というのはちょっと作り物感がある。
ラブコメの出会いの場面というのは偶然に頼りがちなので本作だけの問題ではないが、いかにナチュラルな導入ができるかという努力は怠らないでほしいところ。

一方、二人が仲良くなってからの関係性--特に、ドリュー・バリモアが奥手になったり、過去の恋愛のトラウマに悩んだり、舞い上がったり、この辺りの逡巡はリアリティーがある。
ラブコメは動き出すと一気に恋がヒートアップして、喧嘩して一気に冷め切ってと、揺り戻しが強すぎて奥ゆかしい日本人には合わないスピード感だが、本作は彼女の優柔不断さがストーリーを落ち着けている。

過去に恋愛関係だった作家先生との再会のシーンで、それまで散々傷付いていたのに、実際に会ってみたら借りてきた猫のようになってしまうところも非常に良かった。
現実は案外あんなもので、よくあるスパッと次に行けるような意志の強い主人公ばかりじゃないんだよ、欧米人とて。

ヒュー・グラント演じる主人公は芸能人という設定で、ヒューからすると「ノッティングヒルの恋人」の設定と立場が逆になった形だが、非常にうまく元スターを演じていると思う。
「あの人は今」的な番組の打ち合わせは笑ってしまうし、ヒロインの甥姪とダンレボで遊ぶシーンの気さくさ(おそらく職業柄サービス精神が抜けない部分があるのだろう)、遊園地の営業の哀愁も、彼が演じてこそという枯れ具合だった。

ラストシーンは作曲家兼デュエット相手として、ヒューがステージにカムバックするシーン。
ピアノソロで歌う許しを乞う切ないバラード、とても引き込まれるシーンの一つ。
その後の新曲発表では、ステージの途中であんなことはなかなかできないだろうが、鑑賞者は前述のバラードでがっちりハートを掴まれていて、揚げ足を取る必要はないはずだ。

最後に、彼らが楽曲提供する架空のティーンのカリスマ歌姫・コーラだが、もう最初から最後まで最高の存在感。
抱腹絶倒のイスラムリミックスを披露したかと思えば、ステージでは余りのセクシー&キュートっぷり。ぷりぷりのおしりもふんだんにサービスしてくれる。
本作が映画デビューだったコーラ役のヘイリー・ベネットなので演技力には疑問符は避けられないが、笑える戯画的なキャラクターとして割り切って観れば、なんだかんだ作品に笑いと目の保養を与えてくれていると評価して良いだろう。

物足りなかったのは、ヒロインが元交際相手への想いを断ち切らなければいけないところ、結局勇気が出ず、耐えきれなくなった主人公が手を出してしまう一連の流れ。
結局ヒロインは他力本願だし、その一件でヒロインが主人公の漢気に惚れるのはわかるが、主人公はそれでいいのか。私としては、ヒロイン自身にしっかり落とし前をつけてほしかった。(そんな弱腰だから別れたあと小説にされちゃうんだよ。なんて絶対に言っちゃいけない。)

written by K.
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