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男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋のmatchypotterのレビュー・感想・評価

3.8
これもこれで久しぶりだね、寅さん。

『男はつらいよ』シリーズ、第29作目。
いつもの冒頭の夢の寸劇、、、これ、VFXか。

まさか寅さん扮する水墨画家が描いた雀がアニメーションになり、羽ばたく。
一瞬目を疑う。寅さんも、『男はつらいよ』ですら、技術と時代が進んだ、そんな気配を感じた。

いしだあゆみ、柄本明、津嘉山正種。
今や大御所の俳優たちが若手として集ったこの29作品。
若手と言いつつ、貫禄と存在感がスゴい。

京都と陶芸。歴史と伝統。
そして、京都も陶芸も歴史も伝統もわからない寅さんと、そんな由緒正しいモノと、存在感並々ならぬ俳優たちとの共演。

これは良い。
京都とか、伝統とか、脈々とそれはそれの独特で唯一無二の世界がある中で、どこにも属さず天涯孤独の唯我独尊男が、割り込み、かき混ぜる。

それが伝統側から見れば新鮮な刺激となるらしく、寅さんからすればなんだかよくわからない世界。
普段なら絶対に交わらない2つの世界が交わり、結局寅さんが掻き乱す様が何とも滑稽で素敵。

柄本明が諫めようが、由緒正しい先生だと崇めようが、それが何だと言わんばかり。
お礼にもらったお茶碗の価値もわからずぞんざいに扱うチャラチャラヘラヘラどこ吹く風の適当男。

それがいしだあゆみの元を訪れたシーンの、急な哀愁さとのGAP。この浮き沈み。
それもこれもいしだあゆみから放たれる“未亡人”の空気。
寅さんもそれに完全に飲まれ、観てるこっちも飲まれる。

このいしだあゆみが醸し出す雰囲気と仕草、、、そりゃいつもの“恋の病”にもなる。

適当で、どこ吹く風で、大らかに、細かいことを気にしない寅さん、それが誰よりも神経質な男。
これぞ昭和の江戸の男。

「こういうケースは初めてだな」

逆にロックオンされてる感じ。博が言うのもわかる。
そして、吉岡秀隆、みつおが駆り出される。これもまた初めてのケース。ちゃんと成長したな、みつお、意外と逞しい。

変に意識し合う2人。
今回は“どこ吹く風の風天の寅さん”と“団子屋風情の下町に住む寅さん”の両面性をそれとなく描く。

ある意味、寅さんの“攻め”と“守り”のコントラスト。

美人で気が効く女性に惹かれ、後ろ髪を引かれるも、逆に意識し過ぎると1ミリも前に進むどころか何もできない寅さん。

いい加減勇気を出せよと言いたくもなるが、これだから“風天の寅”が成り立つ妙。

それでも彼を中心に人と人が繋がり、新しい風が吹き、大騒ぎと化し、色んな心が生まれる。
彼も彼で傷ついたり、困惑したり、別に望んだことでもないこともたくさん起こるけど。

それでも笑って、前を向き、新しい風に吹かれる男、寅さん、やっぱり素敵。

あぁ、京都行って、どこだかわからない木造の家屋で目覚めて適当に過ごしたりしたい。
毎回このめちゃくちゃ好き勝手に地方で行き当たりばったりの生活してる寅さんが羨ましくて仕方がない。

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TSUTAYA DISCAS運営の映画コミュニティサイト「Discover us」にて同アカウント名でコラムニストをさせて頂くことになりました。
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別視点で色々映画について書いていこうと思います!ご興味ある方は是非お待ちしております!
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