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その街のこども 劇場版のoのネタバレレビュー・内容・結末

その街のこども 劇場版(2010年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

久しぶりに再見。しみじみいい映画。

いかにもテレビっぽいハンディカムによるブレブレのカメラワークと津田寛治の軽いノリも相まって、序盤はまるでナンパもののAVみたいで気が削がれるんだけど、森山未來とサトエリの2人が終電を逃して歩き出してから、ようやくこの映画の良さがにじみ出てくる。
被災当事者ならではというか、被災後にひと儲けしてしまった親を持つ青年(森山未來)の複雑な心境からくるヤバめの台詞(屋根の修理で通常料金の10倍にはドン引き。よくこんな設定と台詞考えますよね。実際にそういう人がいたと思うけど)の数々にはなかなかえぐられる。
奇しくもこの映画の完成後に東日本大震災があって、(一面的とはいえ)耐震性をめぐる認識からくる建築に携わる人たちが漏らす「100年に一度の地震なんてくるわけない」的な発言は、本来意図していた何気なさを超えて、複雑な意味をもたらしてると思う。
あれから13年たって神戸に来た女性(サトエリ)が、終盤、亡くなってしまった友達の父が住むマンションの近くをたまたま通りかかって、逡巡しつつも勇気を振り絞って挨拶に行き、おっちゃんと再会する。再会後、ベランダから手を振るおっちゃんの姿に思わずじんわりくる。
この2人が再会したシーンは(きっとあえて)省略されていて、それによって鑑賞者はそこで起きたことを想像できるし、もし似たような経験をしていれば、自分に置き換えて疑似追体験できるんじゃないかと思う。非常によく考えられた省略だと思う。

本作の後、森山未來はモテキでブレイク、脚本の渡辺あやは後に朝ドラのカーネーションや今ここにある危機〜やエルピスという重要作を書き、音楽の大友良英は朝ドラあまちゃんを担当するなど、それぞれの活躍を予感させる作品になっているのは偶然ではないでしょう。サトエリは……だけど、グラビアアイドルから女優に転身して、キューティーハニーのような表面的なイメージをいい意味で裏切る好演を見せてるしギャルかわいい。

レンタル落ちのDVDをたまたま見つけたので思わずゲット。また折を見て何度も見返したいと思う。
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