あんじょーら

50/50 フィフティ・フィフティのあんじょーらのレビュー・感想・評価

2.9
27歳の青年アレンは彼女は居ても、自分では車の運転も出来ない男、清潔好きでおとなしいです。同僚のカイルの車に乗せてもらってラジオ局に出勤する毎日です。そんなアレンが突然ガンを宣告され5年後生存率は50%・・・というのが冒頭です。



闘病モノの映画とは思えないくらいのコメディなんですが、その笑いのセンスが最高です。しかもコメディだからということで陥る安易な薄い話しにならず、しかし病気であることで様々な現実的変化を写しながらも、へヴィになり過ぎないバランス感覚は素晴らしかったです。このバランス感覚こそ、この映画の肝だと感じました。シリアスなお涙頂戴モノではなく、泣いてばかりもいられない状況に割合おとなしい青年が陥るからこその「現代リアル」を上手く表現出来ていると感じました。



友人であるカイルを演じるセス・ローゲンの演技と喋りの上手さも光りますし、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットとの掛け合いの会話の妙、そしてなにより脚本と演出は非常に上手いと思いました。このカイルという人物がアレンにとって足りない部分を補完しあう友人であり、カイルにとってもアレンが必要なパーソンであることの相棒感がたまらなく良かったです。こういう友人が私も欲しいです。


シリアスな題材をシリアスに見せるのではなく、コメディを散りばめたからこそ、リアルな重さをより際立たせることに成功していると思いますし、細かなギャグは計算されていて素晴らしかったです。ジョゼフ・ゴードン=レヴィットもさすがですけれど、セス・ローゲンのチカラは大きいと思います。死を軽々しく扱うわけでもなく、しかし日常的に組み込まれていることを実感させることを達成していると思います。そのうえ笑って見られてしかもコンパクト(98分)にまとめられていますし、とても良い映画でした。


また私が見た回は非常に込み合っていたにも関わらず、様々な客層(年齢的にも私を含む1人で来てるオジサンからオバサン3人組みや、若いカップル、1人で来てる20代青年や、30代1人女子、おまけに外国人カップルまで!)が、一緒になってくすくす笑い、そりゃオーバーだろうという笑いすぎな声を共有し、最後には映画館内が良い緊張感に包まれ、という微笑ましいヒトトキを味わう経験が出来たことも良かったです。たしかにDVDは便利ですけれど、映画館で見る映画はやはり良い体験です(と再確認したのがジョージの映画が終わってしまう時、ああ残念)。


よく考えるとこの作品は「(500)日のサマー」のトム(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)がアレンになったとも言える作品であり、あのキャラクターの成長した後のようにも思えました。



「(500)日のサマー」が好きな方に、泣ける映画が嫌いな方に、オススメ致します。