月負犬

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qの月負犬のレビュー・感想・評価

-
シリーズを通して壮大なイニシエーションの寓話なのだなと感じる
分かりあうことが出来ない不信感は常に伴うのにその中で共存していく人間そのものが描かれてる
人類補完計画は、ひとつになって"孤独"という分かりあうなどしなくてもいいし、誰も傷つけず傷つけられることもない完全体になることで、それに拒む人たちは分かり合えないことはあっても一人一人の個が失われ情が消えていく恐怖があるのだと思う
カヲルくん以外誰もシンジくんに世界が終わりかけたことを教えてあげなかったのは、多分彼が綾波と交わろうとしたことで世界が終わろうとしたことを到底受け入れられないと思った上での優しさで、ゼーレの少年であるカヲルくんはいつしかシンジを助けたいという優しさを持ってしまったけど、運命を定められた少年だから簡単に彼は大人に捻り潰される
いつもシンジくんの心の支えになるのはクローンめいたものなのだと思うと少し悲しくもなる
国家や社会というものの中で私たちが知らないことはあまりにも多いし、誰も向こうから無条件になんて教えてくれない、その中で混乱しながらどうにか正義的に進もうとしては絶望して堕ちていく人間が反映されてるのがシンジくんなのだと思う
エントリープラグのLCLの液体の中にいるヒトが胎内の比喩なら、エヴァ=自分の起源である母ということになるし、その関係に縋りつこうとするパイロットたちからは家族という存在の力の強さを感じさせられ少し残酷にも思える、血には勝てないじゃんてなる
月負犬

月負犬