ヴレア

風の歌を聴けのヴレアのレビュー・感想・評価

風の歌を聴け(1981年製作の映画)
3.8
「ドライブ・マイ・カー」が近くの映画館で公開されるのは3週間後との事で、待ち遠しいので同じ村上春樹原作のこちらを先ずレビュー。
原作小説を読んだのは高校生位の頃で、他に「羊をめぐる冒険」や「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」等でどハマりし、ひたすら村上春樹ばかり読んでいた時期があった。
デビュー作である今作が映画化されている事は知っていたがなかなか観る機会が無く、今回U-NEXTで見つけたので初鑑賞。

なんとも昭和チック溢れる世界観と文学的な香りが漂う本作はなかなか面白く、原作の再現度もかなり高いのでこれは満足いくものだった。登場人物の一人、鼠の大好物(ホットケーキのコーラがけ)もしっかり再現されていて良い(笑)
あと、ビーチボーイズの「カリフォルニア・ガールズ」にのせて主人公が港や商店街を彷徨うシーン等も叙情的でとても素晴らしいなと思った。でもこの楽曲の使用料に数百万円かかり、映画の制作費を圧迫したのだとか。それでもこの曲は原作でも重要性が高いので英断だったと思う。

ただ、村上春樹のファン以外にはあまりオススメできない作品である事も確かだ。
主人公のモノローグによる心情描写、特にドラマチックな展開やアクションが有るわけでもなく、ひたすらバーでビールばかり飲んでいるようなまるで映像化には向いていない地味な内容であるからだ。
だからこそ村上春樹作品の映画化はハードルが高いと言えるが、ファンにとってはよくぞ映画化したなと褒めても差し支えない内容だったと思うのである。
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