Jeffrey

風の歌を聴けのJeffreyのレビュー・感想・評価

風の歌を聴け(1981年製作の映画)
3.5
‪「風の歌を聴け」‬
‪冒頭、火星の井戸より。文体、駅内を動くカメラ。二十一歳の学生の僕。神戸まで…次の瞬間タイトルロゴ出現。海辺、知り合いの鼠、三人の女の子と寝た話、音楽と電話箱の女性、手には酒瓶、倒れてる男、不思議な音色と地面への描写…本作は大森一樹が前年に製作した医療青春の“ヒポク‬ラテスたち”の翌年に同じくATGで撮った村上春樹原作の青春映画で再鑑。本作は悪い意味でびびったのが西洋文化への憧れが非常に強い事。と言うか米国の様々な物の引用を見ると西洋と言うよりかは米国なんだろう。原作を読んだ事はないが、映画をみる限り感じる。だが出だしの引用は前作のヒポ…と同じで‬彼の一種の芸風に思う。青年の読書中にラジオの向こうの声の人と話し合う下りからザ・ビーチ・ボーイズのカリフォルニアガールズがほぼ一曲流れ、そこからレコード屋へ行く。それにしても有名なバンドの楽曲を劇中に入れるだけでかなりの金額を持っていかれそうなものだが一千万映画のATGには痛い代償‬だろう…スチル写真のスライドに主人公の独り言、朝日新聞の上で愛し合い寝る若者。歴史の振り返り、BARでの会話など全体的に物静かに淡々と進むが登場人物が濃くて印象に残る。まず主人公の僕、指が4本の女、親友の鼠、鼠の女、当たり屋のチンピラ、精神科の先生等、中々強いキャラか押し出されてる。‬中でも精神科の先生役がATGで五本の傑作を遺した黒木和雄だから驚いた。それに癖のある室井滋の若き日を見れたのも個人的には良い。真行寺君枝は髪も容姿も綺麗だなと改めて思った。古尾谷雅人も出演していて監督との友情が見てとれる。この映画の好きな点は監督と原作者が主人公らに重なる所である。‬また前作は気狂いピエロのポスターが目立ち、本作では「ベトナムから遠く離れて」のポスターが目立つ。その点は非常にお洒落で美しいカメラワークは個人的には好き。それからどっからどう見てもゴダールやウディ・アレンに影響受けているだろうと思って調べたら、やはり二人に影響受けてた。終盤、紅葉‬‪の枯葉が吹き荒れる…でやっぱりTBBが流れ幕が下がる。挿入歌は良かったが、特に個人的には浅川マキの“少年”が喫茶店で流れるんだが最高。他は港の彼岸花、ちっちゃな時からが好きだ。物語は帰省した青年の一夏の日々を新鮮に映した作風で、原作とどの位違うか気になりながらも未だに読んでいない…。‬大森一樹がATGに残した村上春樹原作を映画化した青春作品の本作は途轍も無い米国文化への憧れを感じる…まぁ作者がそうであるのだろう(原作未読)更に部分的にゴダール風に仕上げている。前年に製作したヒポクラテスたちが余りに良かった為、萎えるが映画全体の雰囲気と真行寺君枝が良かった。‬
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