「言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きていたら
どんなによかったか」
園子温監督らしいどっと疲れる映画ではある。し、エロ・グロなどもあるので観てて気分の良い映画ではないんだけれど、田村隆一の詩がずっと頭のなかをぐるぐるする。
「あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ
あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる苦痛
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう」
東電OL殺人事件をもとに作られたストーリー。東京電力の幹部社員だった女性が、東京都渋谷区円山町にあるアパートで殺害された事件で、その亡くなった女性が昼間とうって変わって夜は娼婦をしてたことが印象的な事件。
女性の欲望が映画のなかにぐさぐさとトゲのように出ている映画。
男がこんな女性がいたらいいな(神楽坂恵演じるいずみ)っていう妄想っぽく取られそうな映画だけど女の人の本質を得ていたと思う。
「あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか
言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる」