百合

危険なメソッドの百合のレビュー・感想・評価

危険なメソッド(2011年製作の映画)
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ファム・ファタール
ユングとフロイトという心理学の祖を築いた二大巨頭、その間のサビーナ・シュピールラインというひとりの女性。心理学を少しでもやったことのある人間なら楽しめる内容。しかし現代の精神医学に首まで浸かった身としてはやるせない気になるところも。シュピールラインは統合失調症だったんだよなぁ…統失は遺伝病なので。
精神分析学もそうそう現代では相手にされるもんでないから、そう思ってしまうとマジメに見られない。夢判断とか、もはや中学生がハマるおもちゃでしかない。
しかしふたりの天才を翻弄する女性という意味では非常に楽しめる作品。優秀で影のある美しい女性に惹かれるユングとフロイト。そういえばユングの元に来たグロス博士がとても良い役柄だった。理性的で性を抑えつけることに長けたユングに、全く違う世界を見せるグロス。しかしこれも突き詰めると、性の抑圧/解放というようなありきたりなテーマになってしまう。
本作で唯一目を見張ったのはシュピールラインの「セックスすることは死ぬことと同義」という話。個が溶けてしまうような体験を我々はセックスすることで覚えるのだ。セックスは一種の自己破壊、タナトスに基づくものであるとの説には納得した。ユングがセックスをしては怖気づく様子の裏付けにもなっているというか…しかしこれも突き詰めてしまうと男は度胸なし/ 度胸のある女という安直な二項対立につながる気がする。それもどうなんだ。
静かで短くまとまっていて教材としてはよい映画だった。ただやはり端々の映像は洗練されておらず、その程度か…という印象。キーラナイトレイの演技力に映像のお粗末さが助けられているといえる。
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