はんぺん

千年女優のはんぺんのネタバレレビュー・内容・結末

千年女優(2001年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

とにかく千代子さんが走る。走って走って、(比喩ではなく)時代を駆け抜けて行く。

今敏監督が作品内で現実と虚構の境界を曖昧に描くのはよく見られるが、今作はその境界がパプリカやパーフェクト・ブルーより分かりやすく、その点については見ていて理解しやすかった印象。
他作品と違い、この作品のミスリードはそこじゃない。

千代子さんの「あなたはいつも私を助けてくれるのね」って台詞は、素直な気持ちだとは分かっていてもむごい。突き刺さる。

また、この作品を恋愛の括りに入れるのはちゃんちゃらおかしい話で、エッセンスとして存在してはいるものの、主題はそこじゃないと思う。
ならば主題は何なのか、と考えるとき、私は「女優というものの狂気」ではないかと思う。
千代子さんの最期は希望に溢れていて、それはとてもこれから死を迎える人のようには見えない。その理由は、千代子さんが死してなお鍵の君(=手の届かない、掴めない存在=理想の女優像、真の自分の理想の姿)を幼き日と同じ瞳の輝きで追い続ける、つまり、あの世でも女優であり続ける、千年女優を続けるからではないか、と思った。千代子さんにとって、死などただの通過点に過ぎないのだ、と。

だからこそ、そんな千代子さんのラストシーンは私たちから見るとあまりに眩く、どこか不気味にさえ映る。
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