千年女優の作品情報・感想・評価

「千年女優」に投稿された感想・評価

okapy

okapyの感想・評価

4.5
現実(リアル)と回想(フラッシュバック)と虚構(フィクション)の重ね合わせ及び同一化。映画への愛を感じる一本。やっぱりコンさん凄すぎますよ。最初のフジワラチヨコ邸に行く途中に潜るトンネルとかなんか鈴木清順のツィゴイネルワイゼンに出てくる景観とほぼ同じに感じたけど、そうなのかな…。

このレビューはネタバレを含みます

この映画のレビューを見ていると、多くの人が千代子の最後の言葉に違和感を感じているようです。

確かに映画のあらすじだけを辿っていけば、散々恋を追いかけておいて、最後に「自分が好き」だというのは、納得がいかないエンディングだと思います。しかし、ただあらすじを辿るだけではなく、しっかりとこの映画の文脈を読みとり、千代子の語りに耳を傾ければ、最後の言葉もそれほど嫌なものでなくなります。少し長くなりますが、千代子が言った最後の言葉の真意について考えていきたいと思います。

まず質問ですが、鍵の君が言う「一番大切なものを開ける鍵」の「大切なもの」とは何だと思いましたか? 劇中ではこの問いに対する明確な答えが出てきません。私はこの物語を理解するにあたり「大切なもの」とは何かを色々考え、その結果「希望」という言葉が思い浮かびました。

鍵の君には民間運動を起こし、世の中を良くしようとする希望、いつか故郷に帰り描きかけの絵を完成させたいという希望がありました。そして鍵は千代子の手に渡り、鍵を返すため再び鍵の君に逢いたいという強い希望を抱くことになりました。二人が求める形の違いはあれ、鍵を持つものは、まるで運命を与えられたかのように、一途に希望を追い続けてしまうのです。

この物語の結末は虚しく、二人は結局「希望」を成就させることは出来ませんでした。いくら追い続けても願いは届かず、いたずらに年月だけが過ぎてしまいます。

しかし鍵を手にした千代子は、そのまま何も開けることがなく生涯を終わらせたのでしょうか? 確かに鍵を手にした主人公の心情に感情移入し、勝手に鍵を「希望」と解釈してしまえば、儚くとも千代子は何も手にしていないことになります。しかし俯瞰でこの物語を眺めると、千代子は大切なものを手にしたことは明らかです。それは言わずと知れた「恋」する気持ちと「女優」という職業です。

千代子は最初に鍵を手にした時から鍵の君に恋をし、彼を追うために女優という職業を選びました。無我夢中で恋をするたびに、女優として成長していく、それはまるで運命に弄ばれているかのように、千代子の純真はスターの道を切り開いていくのです。ところが不思議なことに、ある日何らかの拍子で大切な鍵を失った途端、千代子は魔法が解けたかのように、恋をあきらめ、結婚し、女優の仕事も遠のけてしまいます。

ここで一つの答えが見えてきます。それは「鍵と恋と女優」という三つ巴の関係で、千代子の人生が成り立っているということです。千代子が鍵を失くした途端、彼女は恋をあきらめ、女優の仕事を休業します。見方を変えれば、千代子が恋にかげりを見せた途端、女優としての意欲もなくなり、自然と鍵も手元から離れてしまうのです。

結婚生活をしていたある日、鍵を失ったのは夫の作略だと知った千代子は、夫から鍵を取り戻し、女優に復帰し、再び鍵の君を追い始め、恋を続けまた輝きはじめます。しかし前向きな姿勢とは裏腹に、歳月ばかりを費やし全く鍵の君に逢うという望みは叶えられません。千代子は長過ぎる時間の経過の果てに、いつの間にか好きな人の顔も思い出せなくなり、嘆き悲しみます。千代子は徐々に、恋する自分の気持ちにかげりがあると気付きはじめるのですが、そのタイミングで、実質最後の作品となる撮影途中に、大きな地震が起きてしまいます。

地震でセットの下敷きになり、立花源也に助けられた千代子は、ヘルメットに写る自分の姿を見つめ動揺します。以前アヤカシ(老婆・未来の自分)から千年の呪いをかけられた時に言われたように、自分にも老いが訪れたことを知ってしまいます。自分の見た目の美しさも薄れはじめ、メンタル面だけでなく、年齢的にも恋する年頃ではないと気付いてしまうのです。

千代子が過ごした青春から斜陽の道筋は、いつも鍵と女優と恋がありました。まだ十代の毎日好きが膨らんだ日々から、長過ぎる歳月に伴い好きな人の顔も思い出せなくなる日まで、千代子は前向きに生きてきました。そして千代子は恋の限界を感じた時、再び鍵を失い、四十代で恋をあきらめ、女優を引退してしまいます。

それから約三十年間、千代子は恋の想いを封印していたのですが立花源也から鍵を手渡され、三たび恋する気持ちを呼び起こします。その最中千代子は病に倒れ、病院に運ばれ、源也に看取られながら逝ってしまいます。そして最後の「だって私、あの人を追いかけている自分が好きなんだから」という言葉になるのですが、その背景は、千代子が女優を辞めた(恋をあきらめた)時の宇宙船のシーンです。

このシチュエーションを念頭に置き「千代子は純粋に恋をしていた」ことを思い返せば、きっと最後の言葉もそれほど嫌なものではなくなります。

四十代の千代子は老いていく自分の姿を認識し、変わり果てた自分を見たら相手はどう思うだろうと不安にかられ、恋をあきらめ、鍵を無くし、女優を辞めてしまいました。あれから三十年が経ち、命が尽きるその日、千代子は鍵を取り戻し、忘れていた恋を取り戻し、思い出の中で色々な自分を演じます。そんな体験をした千代子は、もう一度恋の喜びを感じたのではないでしょうか。そして恋を忘れていた三十年間を悔やんだのではないでしょうか。

女優を辞める少し前、鍵の君を追い続けた傷の男から手紙を渡された時、千代子は鍵の君の死を悟ったことでしょう。鍵の君の死を覚悟していた千代子は、自分が死ぬことでもう一度あの人と同じフィールドに立てる。もう一度恋ができるのだと、そう感じたのではないでしょうか。だから千代子は死に間際に宇宙船の中で呟くのです。恋を始めた十代ではなく、恋をあきらめたあの時に戻り、もう一度恋の続きをしたかったのです。

出会って間もない千代子に、鍵の君は「十四日目の月」の話をします。鍵の君は真円を描く十五日目の満月よりも、それを待ち望む方が好きだと言っています。完璧や真となるそのものよりも、それを求める希望こそ、本当に意味があるものだと言っているのです。

千代子の最後の言葉は、鍵の君の言葉に対する答えにもとれます。「一番大切なもの…」千代子が最後に出した答えは「思い出」でした。その大切な思い出の中には、いつも恋をしている自分がいます。もし仮に、千代子の恋が成就していたとすれば、恋の形も一番大切なものの答えも変わっていたことでしょう。例えば満月が終わり、十六夜、十七夜と月が欠けて行くように、ピークが過ぎれば自然と恋する気持ちも変化するものです。しかし、恋を追い続けている間はずっと彼のことを想っていられます。千年先も、ずっとずっとその先も、大切な人を永遠に想っていられるのです。それを知る彼女だからこそ、堂々と「恋をしている自分が好き」と言えるのです。

そして、千代子は宇宙船に乗って鍵の君を追い続けます。それも地球からでなく月(きっと十四日目の月)から… そしてハッチが開きます。千代子が好きな花、蓮の花(花言葉は純真)が大きく咲くように…

今はもう、今敏監督からは最後の言葉の真意を伺うことは出来ませんが、勝手ながら、このように作品を解釈すれば言葉の誤解も解け、純真なままの千代子が生き続けるのではないでしょうか。

本当に素晴らしい映画ですので、多くの方に愛してほしいです。
Kimura

Kimuraの感想・評価

3.9
圧倒的な仕事量、そして質。
演出、展開、作画。
アニメーションが素晴らしい。

ストーリーが個人的、という所がもう一つポイントなのかもしれないけれど、私はだいすき。

世界は惜しい人をなくした、と思う。
今敏の子供達はどこにいるのか、そして夢見る機械はどこに。
otom

otomの感想・評価

4.5
個人的には今敏作品の中でも埋もれがちな今作ではあるものの、面白い事には変わりない。月と地球の物理的な距離よりも遠い影を時間を越えて追う女優。その疾走感とアニメーションで表現された走りの形の細やかさは実に秀逸。場面転換の滑らかさも然り。色んな映画のオマージュも楽しい。音楽も平沢進になり今敏作品を観ているって感じ。傑作。
ちえ

ちえの感想・評価

3.5
はっきりしないまま場面がどんどん変わっていって、結局どういうこと?!早く教えて!ってなる。
私は、最後になるほど〜!ってなった。人によると思う。
yukari

yukariの感想・評価

3.8
今敏は天才。perfect blueもそうだけど、とにかく魅せ方がすごい!安定の世界観と独特な音楽には鳥肌!ラストの「だって私、、」からのセリフも好き
ゆうら

ゆうらの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます


2017年 DVDで視聴
この映画に出会うまで15年もかかってしまっていました。
現実での目標・憧れを追うために映画という虚構の中で生き続けた一人の女性の話。
「千年かけても逢いたい人がいます」と「その愛は狂気にも似ている」の二つのコピーを持っており、それぞれ表面上(ストーリー上)の主人公と本当の主人公の姿を表していると考えます。
自分が生きてきた虚構は最初は目的に対する手段だった。が、本当に愛していたのは、というところが最後の一言に集約されひっくり返ります。
ストーリーはもちろん映像表現・音楽も素晴らしいです。(あえて言えばポスターの主人公が本編よりずいぶん太って見えますが...)
映画やドラマ、アニメ、小説など虚構の物語を愛する人すべてに見ていただきたい自分にとって至高の一本です。自分がアニメ好きであり偏見が無くて本当に良かったと心から思えた映画でした。
今敏作品でもっともインパクトあったんじゃないかなと!
女優藤原千代子をファンだった立花源也がインタビューする話なんですが、過去と現在をいったりきたりする演出とカメラマンのツッコミが絶妙!

cmでもつかっていた「その愛は狂気にも似ている」のコピーも印象的!

そしてもう一つ平沢進音楽が最高です🤣👍
sksk

skskの感想・評価

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同時上映だった『パプリカ』がすきすぎるため、そんなにいいか?という感想。おそらくいい映画なんだけど、だったら私はもう一回パプリカを観る。
Mitchu

Mitchuの感想・評価

5.0
最後の台詞、賛否両論あるが、とても人間というものを描いているなあと思った。この作品で平沢進を知ることができて、それだけでも大収穫。音楽が良くて2回も観に行ってしまったずら。
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