【過去作レビュー】
『解釈が観客に委ねられる豊かさ』
なんとなく「アクアマン」新作を観に行くはずだったのが、「千年女優」の再上映を発見。今敏監督作品で唯一ちゃんと観ていなかった作品なので、速攻予約して鑑賞。
(古い作品でも、名作や意義ある作品が再上映される最近の動向はいいですね。大画面で見られて、特に音響は今のほうが遥かにいいので、とても新鮮です)
今敏監督といえば、妄想。
一応設定としては、原節子をモデルとした引退した伝説の女優への初インタビューが実現し、その内容は…という話なんですが。
当然、出演した過去作の話になるんですが、その再現場面になるとなぜかインタビュー役の映像会社社長たちも場面にいたりして、さらには物語にも参加したりして、明らかに妄想の世界が展開します。
妄想世界では、いろんな映画へのオマージュがあって、映画好きはニヤリ。
少女が、一度会ったきりの男性(究極の二枚目山ちゃんの声が聞けますよ)に恋焦がれ突き進んでいくという話ですが、その話と、伝説女優が語る出演作品の内容とが渾然一体となっており、何が現実か、何がフィクションか、正解がありません。
役柄上、平安時代から未来まで「千年」を駆け抜けた女優さん。本当は何を求めていたんでしょうか。
でも、その正解は作品上にはなく、すべて観客に委ねられています。
今の時代、ちょっとでも難解な作品があると、皆すぐにネットに正解を求め、かたや、したり顔で解説する面々も多々いたりして、何か、決まった正解って必要なんでしょうか。
観た人それぞれに解釈できる、そんな作品になっていると思いました。
解釈が観客に委ねられるって、とっても豊かな作品なんじゃないでしょうか。
個人的には、本作は、すべて映像会社立花社長(=今敏監督)の妄想だと解釈しましたよ。