MasaichiYaguchi

千年女優のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
3.9
今敏監督が、数十年にわたり1人の男性を思い続けた女優の姿を、時間や空間を超えて描くオリジナル長編アニメーションは、日本の歴史を振り返りながら、壮大な純愛物語を繰り広げる。
小さな映像制作会社の社長・立花は、かつて一世を風靡した昭和の大女優・藤原千代子のドキュメンタリーを作る為に、人里離れた千代子の邸宅を訪れる。
30年前に突如として銀幕から姿を消し、隠遁生活を送っていた千代子は、立花が持参した1本の鍵を見て、思い出を語り始める。
千代子の語りは、いつしか現実と映画のエピソードが渾然一体となり、波乱万丈の物語へと発展していく。
この彼女の物語には、聞き手の社長とカメラマンも彼女の思い出に入り込み、映画内で共演したり彼女の言動にツッコミを入れたりしながら介入していく。
映画は、戦国時代から未来まで時空を越え、黒澤明の「蜘蛛巣城」、小津安二郎作品など邦画の名作へのオマージュも交えながらテンポよく場面が切り替わっていく。
千代子が女優を続けてきたのは、思いをよせる絵描きの男性に再会する為だった。
ひたすら彼の影を追う健気な姿を縦軸に物語は進むが、湿っぽい悲恋ものには着地せず、予想の斜め上の終盤に向かっていく。