パングロス

千年女優のパングロスのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
3.8


アニメファンの間では、すでに古典として名高い作品だそうだが、2010年に46歳で早逝された今敏監督のこと自体存じ上げず、何の前情報もないまま鑑賞。






【以下ネタバレ注意⚠️】







いかつい顔のディレクターと阪神ファンで関西弁のカメラマンのクルーが、緑多き隠れ家(鎌倉にしては海が近過ぎるが)に一人住まう、明らかに原節子をモデルにした引退女優藤原千代子を取材に訪れる。

序盤から、キャラクターの造型といい、声優のセリフ回しといい、背景画のタッチといい、すべてが「大人向けのアニメだ!」と感嘆させられるクオリティ。

インタビューは、いつしか現実の千代子の過去と彼女の出演作が渾然一体となって、あたかも万華鏡のように、次々と時空をまたいで物語が展開していく。

実際の原節子は、戦時中、大連を経由してナチス政権下のドイツに渡ったが、千代子も満州に渡り女優生活を始める。
いじわるな先輩女優は田中絹代がモデルかもしれないが、きびきびした口調は杉村春子も思わせる。

最初は戦中の国策映画、時代が過去に飛んで時代劇の『天守物語』『蜘蛛巣城(能「黒塚」の鬼女)』『鞍馬天狗』『新撰組』『無法松』etc、また現代に戻ると『君の名は』『ゴジラ』etc。
あれ、監督と結婚したぞ。
するってぇと、高峰秀子のイメージも重ねたのか。と思ったら、案の定、『二十四の瞳』。
そして、『トラック野郎』。
最後は冒頭の『2001年宇宙の旅』を想起させるSFものが再帰。
と、別段シネフィルでもない小生でも、引用、参照している名画の数々が思い起こせた。

展開は実験的でもありながら、アニメとしてのルックは落ち着いて観られる感じ。
映画史に詳しければ「発見」の楽しみが加わるとは言え、そうでなくても十二分にエンタメとして楽しめる作品と見た。

動画・仕上げに「DR MOVIE」のクレジットで李とか朴とかのスタッフ名が列記され、てっきり中国に下請けに出したのかと思ったら、韓国の会社のようですね。

【参考になるサイト】
ミレニアム女優 Millennium Actress
academic-accelerator.com/encyclopedia/jp/millennium-actress

今 敏回顧展2014トークイベント 「いま再び 今 敏監督を語り合おうー『千年女優』編」
練馬アニメーションサイト 2015.2.4
animation-nerima.jp/topics/topic-news/1706/

DR MOVIE 韓国のアニメ制作会社
ja.m.wikipedia.org/wiki/DR_MOVIE
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