白雨

千年女優の白雨のレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.0

どうしても映画館で観てみたいと思って今しかない!と思って観た。

話の筋としては女優として生きた千代子さんの半生、つまり物語の世界の中ではあくまで「現実」の話でしかないものを順々に並べて真面目に辿っていくという形で、劇的な出来事も取材の場で起こったことではなく1枚フィルターを通してみた昔の話。
それなのに、その現実と、彼女が演じた役柄とか溶け合うように境目なく重ね合わされて、次々と時代が切り替わり画面が切り替わり、という感じが、とてもテンポ良く幻想的で、独特の華やかさがあって、観ていてとても楽しかった。

多分若かりし頃の自分自身もある女性に対して、お前が憎く羨ましいという老婆の幻想からは「安達ヶ原」とか三島由紀夫翻案の「卒塔婆小町」が思い出されたし、探し続けていた人と対面する日、念願が叶う日、期待を寄せる「明日」の到来を永遠に延期し続けて、そこへ向かう過程を幸せと呼ぶ価値観が太宰治の「女生徒」っぽかったりして、少しだけ触れたことのあるものの要素を所々感じられるのも、惹かれるポイントだったかもしれない。
ただ、こういう作品がただじっと耐えて待つことや来ないものと分かっていても夢見続けてしまうことの空虚さ、諦観とともに手にした安らぎみたいなものを色濃く反映しているのに対して、千代子さんは受動的に「待つ」というより「追う人」「探す人」だったというイメージ。だから、鍵によって大切な記憶や当時の気持ちを思い出した彼女の姿は活き活きとしていてキラキラ輝いている印象を纏っていて、明るさがあって、こういうのもすごく素敵だと思ったりもした。

それから曲、ほんとうに好き。しばらく経って、またふっと再上映してくれたら良いな。
白雨

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