寝耳に猫800

千年女優の寝耳に猫800のレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
-
手に入らない何かを一心不乱に追い続けることの幸福と不幸、人生を生き続けることは映画の中を生き続けること、そういう普遍的なテーマが今敏という卓越した作家性により鮮やかに焼き付けられている

女性の扱いやキャラクターの描き方など所々に古さは感じるのだが、それを差し引いても、記憶の中に存在する過去の自他と現在の人たちを同じスクリーン上にシームレスに存在させ、混乱なしに描いていく技法はすごい

アニメーションという表現方法は、現在、実際にあった過去、記憶の中での過去など時間軸も語り部も違う物語を同じ画面に存在させられるという点では実写映像よりもいくらか向いているとは常々感じていたが、それが主人公の「走る」という動作も相まって映画をドライブさせる一つの要素になるというのが見事
しかも、千代子が語る本人の生き様(と鍵の君を追う熱)が映画の中盤までをドライブさせてきたにも関わらず、「あんなに好きだったのに、顔を思い出せない」とその速度を脱臼させるところも面白かった

最後の彼女のセリフは、どういうふうに捉えたらいいんでしょうね、でも答えのようなものは別に誰にも聞きたくはない