セイジ 陸の魚のAyakoのネタバレレビュー・内容・結末

物語自体は淡々としたテンポで、常に若干の陰を感じながら進行するものの、最後まで重たい憂鬱感は感じずに鑑賞できました。時間軸を巻き戻したり、テイストの異なる映像が差し込まれたり、色んな演出がされているものの、一つひとつが変に主張せず、巧みに作品に溶け込んでいる珍しい作品だなと感じました。（なんちゃってアート系の作品によくある、”ここ工夫してます”アピールみたいな主張がないので、時間軸がいきなり前に戻ろうが、映像のテイストが変わろうが、混乱せずにすんなり物語の進行についていける。）

ほぼ全ての登場人物が心の奥に傷を抱えながらも懸命に生きている様子と対を為すように終始達観した態度をとり続けるセイジの様子は印象的でした。
彼のことを敏感すぎると指摘する劇中のセリフにもあったように、繊細に色々なことを察知できる敏感さゆえ、人一倍傷つきやすく、実は最も純粋な心を持つ人なんじゃないかなという印象を受けました。その敏感から自分を守る術として、生きることに対して冷めた態度を取っているのかなという気がしました。（どこかピュアなところがあるからこそ、りつこもよく懐いているのかなと。）

キャストも演技派が集結していて、主役の西島秀俊や森山未來を始め、変にドラマタイズしすぎることなく、それぞれ傷を負いながら癒しを求めて身を寄せ合うように暮らす集落での物語を構築している面白い作品です。