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過去を逃れての盆栽のレビュー・感想・評価

過去を逃れて(1947年製作の映画)
3.9
フィルム・ノワールの全てがここにある


謎めいた女性がハードボイルドな男性主人公を破滅の道へと導く。フィルム・ノワールの前提としてあるこの設定、要素を悉く使い込んだ本作は間違いなくフィルム・ノワールを代表する作品の一本。本作を観ればフィルム・ノワールを語れる人間になれます。

自分自身の過去から逃げている主人公ジェフは、文字通り現実に幻滅した人間であり、気怠そうな性格。そんな主人公を演じたロバート・ミッチャムは見事に主人公の暗部に入り込むことができており、一匹狼の探偵になりきっています。一方、相手役のキャシー演じるジェーン・グリアは何が真実なのかを一切顔に出さない、ファム・ファタールとしての役割を完璧に表現しています。最後までこの2人の関係性には魅了されっぱなしです。

本当に愛情はあったのか。嘘をついたのは何のためだったのか。いかにもフィルム・ノワール映画らしい男女の愛の不確かさやドラマティックなラストが観る者の心に大きな「謎」として残されます。
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