紅蓮亭血飛沫

ファースト・ミッションの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

ファースト・ミッション(1985年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

ジャッキー・チェン主演ということで単純明快なアクション映画だろう、と思いきやこれまた意外。
アクションシーンはクライマックスまで抑え目、主人公とその兄による絆を強調するドラマ面に軸を置いた作品でした。

幼い頃に両親を亡くし、生涯通して障碍を持つ兄の世話に明け暮れる日々を送るシャンヤン(ジャッキー・チェン)は、子どもの頃からの夢である船乗りの試験に合格したというのに、兄の事を思うあまり葛藤する羽目になります。
何といっても兄・シャンタクを演じるサモ・ハン・キンポーの表情と演技がとても良いんですよね。
知的障碍のある役を演じているのですが、サモ・ハン・キンポーの顔立ちといい振る舞いといい、現実味が終始滲み出ているのがニクいです。

子どもの頃からの夢を叶えたい、と思う一方で兄の事を大切に思っているからこそ、兄を置いて自分だけの人生を歩むなんて事は良心の呵責が許さない…と思い悩むシャンヤンの思考。
弟にそんな責任ばかり押し付けてしまっている自分を恥じ、自分からあれこれと行動を起こすも世間からは笑い者にされる…と踏んだり蹴ったりなシャンタク。
障碍者への厳しい現実、人々の無関心が、この兄弟をここまで追い詰めてしまっているのではないか…という社会的メッセージが込められている作品だと思います。
シャンヤンの仲間達も、船乗りの夢を明かした途端に「兄はどうするんだ」の一点張りで、その仲間達が何らかのサポートを申し出たりしなかった、というのもこのテーマへの掘り下げに着手できていたかと。

このドラマ自体は嫌いではありませんでしたが、ジャッキー・チェン主演の香港映画なわけですし、とにかくとんでもないアクションが見たいな、と手持無沙汰な感触を覚えたのも否めません。
ドラマ面に力を入れてもらって作品自体の魅力を付与させる事は全然構わないのですが、やはり事前の構え(アクション映画としての質の高いアクションをたっぷり見たい)をしていた以上、若干退屈に感じてしまいますね…。
ある意味、ジャッキー・チェンというアクション俳優を起用したからこその弊害かもしれません。

ですが、クライマックスにおいては抜群のアクションシーンを見せてくれますので、散々焦らされた事もありかなり楽しめる激闘に見入られます。
やはりすごいですよね、ジャッキー…。
ジャッキー自身が歌う日本語主題歌がエンディングで流れたり、いつも通り俊敏なアクションを爆発させてくれる一方、いつもとは少し違う趣が展開されるドラマ面もこれはこれで楽しめました。
何はともあれ、ジャッキーファンならば後悔はしないかと。