とうじ

ビガー・ザン・ライフ 黒の報酬のとうじのレビュー・感想・評価

4.0
原色が映えるシネラマの贅沢な構図の中、どろどろの家庭の崩壊が描かれるギャップが面白い秀作。変な病気にかかった主人公が、その服薬治療をしていくうちに、薬の作用によってどんどん尊大になっていき、家庭に不穏感が走る様子を丁寧に描く。本作のポイントは、あくまで薬の作用は、主人公の精神に内在していたものを拡張して露呈させていただけだということ。なので、最後にみんなで抱き合って、家族の絆と共に一件落着させているように見えて、全然根本の解決にはなっていない。しかも、主人公は「覚えている」というくせに、自分が迷惑をかけた家族に対して謝らないし、息子を指でこちらにこいと指図する感じとか、一個一個の動作がまだ怖い。
シャイニングを彷彿とさせる、家庭における父親のマスキュリニズムに対する深い洞察がなされていて、それがあくまでも地に足ついた普遍的な家庭であるまま描かれるのが怖い。そういう良作ではあるが、多少過剰評価されすぎではないか??
とうじ

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