浅野公喜

肉欲のオーディション/切り裂かれたヒロインたちの浅野公喜のレビュー・感想・評価

3.9
ある映画の主役のオーディションに集められた女優達が次々と不気味な老婆マスクの何者かに襲われるカナダ産80sスラッシャーで主演は「コレクター」「ザ・ブルード/怒りのメタファー」のサマンサ・エッガー。前から気になってた作品で新宿のビデオマーケットでブルーレイを購入して鑑賞しました。

登場人物の多くが女優ということもあり、それを活かしたミスリードや展開が冒頭から幾つも用意されている点や一部殺人の直前には老婆マスク同様不気味な人形が雨の山道にポツンと佇んでたり(&急に腕を掴んで来る・・!)雪の中に手だけ出して埋まってるのが特徴で、多くの方が書いてるようにスケートしながら刃物片手に迫って来る老婆マスクはスローモーションも相俟ってかなりのインパクト。

正直残酷描写は大した事無く犯人も誰が今生き残っているか考えれば想像はつきやすいのですが、老婆マスクは唐突に現れるのでちょっと驚くわ立場が上と思われた「もう一人の殺人犯」の形勢が逆転するラストはなかなか痛快で、役作りの為わざわざ精神病院に入院し自分が選ばれると思っていたらオーディションが開催されると知り会場までやってきたベテラン女優の執念深さや若い女優陣を「良いように使う」監督の醜さも忠実に描いており終盤のピンク色の照明が彩る首吊りマネキンが並ぶ小道具小屋はジャーロ的魅力が。

「便器に〇」は同時期の「スプラッター・ナイト/血塗られた女子寮」でも有ったもの。ブルーレイ収録の最新ドキュメンタリーを観ると写真のみ残っている「モーチュアリー」や「アクエリアス」的なエンディングも用意されてたとの事でこれも映像で観たかった所。

強面のマイケル・ウィンコットがチョイ役で出演しておりオーディションに参加者の一人を演じたリン・グリフィンは元祖スラッシャーの一つ「暗闇にベルが鳴る」にも出演、最近はイーライ・ロス監督「サンクスギビング」にチョイ役で登場(ロス監督はどっちかあるいは両作品のファン?)。同じく参加者でスケート女子役のレスレ・ドナルドソンは「誕生日はもう来ない」にも出演。

個人的にはパナソニックのラジカセやカワサキのスノーモービル、世界一美しいクーペと呼ばれたBMW6シリーズにも目が行きました。
浅野公喜

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