WILDatHEART

チャーリーとチョコレート工場のWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

4.0
『ティムとジョニーの悪ふざけブラック・パロディ劇場』


↓以下、全部妄想なので読まないでね!

2003年に「ビッグ・フィッシュ」で描き切った筈の「父と息子の和解」というテーマを、その直後にまた扱っちゃうのか?と思わせておいて、そこはブラック・ユーモア好きのティム・バートン。前作でユアン・マクレガーを起用して真面目に徹した映画作りを完遂した反動で、ユアンの替わりに自分と同様おふざけが大好きな悪友ジョニーとタッグを組んで、「ビッグ・フィッシュ」のセルフ・パロディで行くか!と二人でふざけにふざけてふざけまくった破茶滅茶コメディがこの映画である。

どの位ふざけているかというと、最も感動的である筈の、件の父と息子の和解シーンがもう奇天烈にナンセンス過ぎて凄い。
「お前、さては長い間歯間フロスしとらんのやろ?」
「・・・そやねん。(バレた)」
そして、おずおずと父子は抱擁を交わすのであった・・・

↑ジョニーとクリストファー・リーの両者の顔に注目すれば一目瞭然なのだが、二人とも明らかにふざけてます。このシーン、100%完全に笑わしにきとります。

ウォンカがチャーリーに工場を譲ろうと決断した理由がまたひどい。
散髪中に白髪(hair)を発見したので、
後継者(heir)が必要だと悟った
ダジャレかーい!

終始膨大な数の名作映画や名曲からの引用だらけで何もかもがパロディで埋め尽くされていて訳が分からない程なのだが、この映画自体がまたセルフ・パロディというメタ具合。
「ビッグ・フィッシュ」で自らが確立した作風を徹底的に茶化し倒し、ぶっ壊しにかかった結果であろう。

極めつけは、ラストの取って付けたような食卓での家族愛のシークエンス。
(「ゴッドファーザー」からのセリフの引用も交えながら・・・)
オマケで入れときました、と言わんばかりの何の思い入れも感じられないこのシーン。
作り手が既に家族愛テーマに飽きてしまっていることがもう見え見え。
結局この映画、元ネタである「夢のチョコレート工場」のリメイク作の筈がパロディ作品だったんかい!
ここまでふざけきっていると逆にあっぱれである。わしは何回パロディ言うとんじゃ!

御丁寧なことにエンドロールの後、「これって全部ジョークですから!」とでも言いたげな悪戯っぽい笑い声が挿入されている。


もちろんティム・バートンは、この映画をマジメに受け取って真っ当に感動する人たちも居る、という世間の反応をも含めた言わば社会実験コメディを最初から想定してこの企画を演出している訳でまったく人を喰ったような話ではある。

ここまで人をおちょくりまくった映画は最近では珍しくなった。
恐るべし、ティム・バートン。
こんな風に世間をも巻き込んだメタ・パロディ劇場を創り出してしまうあたり、一筋縄では行かないシニカルで悪趣味で最高に面白い奴である。

作品のクオリティはゼロに等しいが、プロジェクトとしては予測の遥か斜め上を行く出来栄えだったのでこの評価ということでお疲れティム!


↓最近はバンドマンとしての印象の方が強いジョニーが歌うデイヴィッド・ボウイの名曲のカバー☆
Heroes / Hollywood Vampires
https://youtu.be/U8VnYZLWr_s?si=GJwiNfvOuDc_JKIn
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