1つだけ言いたいのは、何故スペイン語で制作しなかったのか。本当に残念。
今まで鑑賞した映画の中で最も概念的な映画だった。互いを信仰する、宗教にも似た愛。
スペインとは、世間で太陽の国などと呼ばれているが、光ある場所には必ず影がある。光と影、生と死、名声と批判、情熱と絶望。
「君が死を駆り立てる」
死を誰よりも恐れ、また誰よりも恋い慕うマノレテはそれこそ、ルペにとっては美しく酷い男なのだ。
場面中、試合の回数を増すたびに祈る対象物が増えている。そのほとんどが聖母マリアを模していた。
マリア崇拝に関しては、神というよりも我々と共に祈ってくれる存在としての崇拝であるが、マノレテはマリアを通してルペを、ある意味で信仰していたのではないだろうか。
マノレテを望郷の念で縛り、生へ執着をさせたルペは、希望であり生きる意味で、恋にも似た感情を抱かせる美しい死であった。