櫻イミト

ボディ・アンド・ソウルの櫻イミトのレビュー・感想・評価

ボディ・アンド・ソウル(1947年製作の映画)
3.5
ボクシング映画の傑作とされるフィルム・ノワール。「オール・ザ・キングスメン」(1949)「リリス」(1964)など社会派で知られるロバート・ロッセンの監督第一作。脚本は「拳銃の報酬」(1959)のエイブラハム・ポロンスキー。両名とも後に赤狩りの対象となる。助監督ロバート・アルドリッチ。

1930年代前半、小物店の息子チャーリーは父の死によって困窮に追い込まれプロボクサーになることを決意。親友のショーティーがマネージャーとなり快進撃を続け、タイトル戦に辿り着く。王者は黒人ボクサーのベン。しかしその試合は金権プロモーターのロバーツが仕込んだ八百長だった。。。

ボクシング業界を取り巻く構図が八百長を含めて詳しく上手く描かれていた。主人公の周りで次々と人が死に、ファムファタル的な存在も登場するフィルム・ノワールなストーリー。ただ個人的には、主人公から情念が伝わらずそれほど落ち込む局面が無いため、いまひとつ盛り上がりに欠けたのが惜しい。

資本主義への批判、ユダヤ人としての背景など、社会的主張は強く感じられた。特に1947年制作時点での黒人パートナーの対等な描き方には注目しておきたい。先日観た「チャンプ」(1931)でも黒人少年が主人公の子供と対等な親友として描かれていた。ボクシング界は男の腕っぷしの世界なので人種による差別が少なかったのだろうか?

※ロッセン監督は貧困家庭で育ち、プロボクサーとなって学費を貯めてニューヨーク大学に入学した。
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