すえ

緋色の街/スカーレット・ストリートのすえのレビュー・感想・評価

4.6
記録

傑作は傑作なんだけど、クリスがあまりにも報われなさすぎて苦しい。あそこまで冴えない中年感を出せるエドワード・G・ロビンソンが素晴らしい、可哀想で可哀想で仕方がなかった。

フリッツ・ラングの映す全てが美しい、色褪せないフィルム、美術の豪華さも映像の美しさに拍車をかけている。そしてなにより、ジョーン・ベネットが輝いており、ずっとこの映画の美しさの中心にいる。まさにファム・ファタール。

終盤あたりで物語が一気に加速し、グイグイ引き込まれる。ラストの明暗、影の使い方はやっぱラングさん凄いっすわ、と言いたくなる。明滅する部屋での一連のショットはどれも素晴らしい。

序盤のクリスが葉巻を断れずに、こっそり十字を切る場面、これは1本のマッチから3番目に火を貰った者に不運が訪れるという迷信からきている。欧米では、人差し指と中指を交差させることは幸運を呼ぶしぐさとされる、クリスは結局不運から逃れられなかったわけだが。序盤のこの時点で物語の運命が決まっていた、どこまでも報われない。

この時代のハリウッドで、犯罪者が罰を免れる結末が承認されるのは珍しい、キティの下着姿やペディキュアのシーンなどから一定の規制はかかったらしく、いくつか劇場ではそれらの場面が削除された上での上映だったそう。

傑作ノワール、たまにこういうのが観たくなる。

2023,278本目 10/23 DVD
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