朝田

緋色の街/スカーレット・ストリートの朝田のレビュー・感想・評価

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凄すぎる。老いた真面目な男がセクシーな悪女に何もかも奪われ利用され、その苦しみから逃れる事すら許されない。主人公の追い込み方と突き放し方が尋常ではない。大胆な省略が施されたテンポの良い編集が逃れられない運命の残酷さを際立てる。ラングらしい厳しさが全編に行き渡っていて哀れだが面白すぎる。殺人シーンを捉えたカットはどれもメチャクチャ怖い。陰影がビシッと決まった格調高い照明も相まって非現実的なムードすら漂わせる。暴力が発動する瞬間の厭さ、不穏さを描かせたらラングはとてつもない。明滅するネオンや壊れたレコードプレイヤーを用いた演出は、もはやノワールというより怪奇映画の領域に達している。ジョーンベネットの葉巻を吸う仕草一つとっても悪女を生々しく体現するかのような演技もナラティブに説得力を与えていて素晴らしい。とにかくドライで、ノワールの悪夢感を体現するかのように陰鬱な大傑作だ。
朝田

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