じじ

キャタピラーのじじのレビュー・感想・評価

キャタピラー(2010年製作の映画)
4.2
この題名から受けるイメージとだいぶ違った
とても切なくて苦しくてちょっと嫌な気持ちになる作品だった

江戸川乱歩の『芋虫』と言う小説を参考に作られたらしい
小説は未読です

時代は日中戦争
戦争に行っていた久蔵は爆弾で酷い怪我を負い家に戻ってくる

しかし爆弾のせいで両腕 両足を失い 耳も聞こえず 話す事もできなくなってしまった

戦って生き残った『不死身の兵士』などと言って祭り上げられた久蔵だったが何もできない体があるだけ

妻のシゲコは自分では食べる事さえもできない久蔵の世話に追われていく
どんどん久蔵の精神は動物的になっていき食べる 寝る 性欲 しかな無いかのようだった

シゲコは久蔵の世話の他にも田んぼや機織りなどの仕事をしていたが戦争のせいか段々食べ物が少なくなっていく

久蔵はそんな事お構いなしで自分の分が少なければシゲコの分も食べてしまう
シゲコにはもう久蔵への軽蔑の心しか無かった

そして2人の関係はどんどん狂っていく…


元々妻シゲコに横暴だった久蔵が戦争で大怪我をしたからってシゲコに久蔵の介護をする愛情は無かったと思う
でも周りの目もあり『軍神』とか祭り上げられた事もあって久蔵を放っておくわけにもいかないし生活の為にも久蔵に降りる恩給を当てにするしか無い
嫌々介護をしているのに当たり前っぽく要求してくる久蔵が更に嫌で仕方ない
そこで細やかな嫌がらせをするシゲコに仕方ないよねって思う
でもこの時代の男女の関係って男が偉くて当たり前なんだろうなぁとも思う

とにかくこの作品を観ても幸せな気持ちにはならない
ずっと嫌な気持ちが残る
あまり見返したくはならない作品だが観て良かったとも思う作品
じじ

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