空の落下地点

ル・アーヴルの靴みがきの空の落下地点のレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
3.2
優しさには視野があり、優しさの視野が狭い人は、全ての人を救うことはできない。

すごいホラーな終わり方になってたんですけど。桜って日本人女性のメタファーなのかな。病み上がりの妻が「すぐに食事をつくるわね」なんて言ったら普通は止めるものだよ!妻が不滅の、死にそうになっても必ず復活する家事マシーンみたいに描かれてる。少年も妻も、どこかライカ犬に重なる。
生存が懸かんないと優しくなれないっていう話でもある。ライカ犬も妻も少年も、ただの生存本能を愛情や忠誠と勘違いしてるだけに見える。生存が懸かってなくても優しくなれるモネ警視が一番、優しかった。

食事抜いたり、夫の靴磨いたり、それで身体壊したら、夫は治療費足らなくなる心配もしないで高い花を買ってくる。密航したい少年の為には3000ユーロ稼ぐけど、妻の為には?っていうね。助け合うことで生きながらえるって言ったら聴こえはいいけど、パン恵んでもらってるシーンめちゃくちゃ違和感。太宰治の畜犬談を想起する、だって冒頭で命軽視する性格バレバレだし。
火事場の馬鹿力を出す時の見極めが出来ないっていうか、少年と遭遇する前にもう妻は限界だったし、その馬鹿力を妻の為に発揮し始めてなきゃいけなかったんだよ。

絶望は人を静止画にする。移民だからって、底辺だからって誰もが皆、思考停止することなく生きてゆけますように。
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