ル・アーヴルの靴みがきの作品情報・感想・評価

「ル・アーヴルの靴みがき」に投稿された感想・評価

tak

takの感想・評価

4.0
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の本作は、ヨーロッパで深刻な問題でもある不法移民をテーマにしている。フランス北部、イギリスとの海峡に面した港町ルアーブル。ある夜、港に置かれたコンテナから子供の声が。翌朝、扉を開けるとアフリカから来た人々が黙って座っていた。その場から一人逃げ出した少年。一方、街で慎ましく暮らす靴みがき主人公は、妻の急な入院と自分を遠ざける態度に戸惑っていた。港で見かけた少年と知り合った彼は、何とか少年を匿って、彼が母親の暮らすイギリスへ渡るのを手助けしようとする。追っ手が迫り、資金はなし。彼の静かなる奮闘がこの映画の軸だ。

アキ・カウリスマキ監督の映画は、陽のあたらない場所に生きる庶民を描くことに特徴がある。この映画も例外ではなく、決して裕福とは言えない主人公夫婦の暮らしが描かれる。パン屋にツケをためているような彼が、少年のために大金を集めようとしたり、危険を冒したり。登場人物がニコリともしないのも監督作品のお約束。だけどなぜだが僕らはホッとする。それは今や映画でも現実世界でも失われつつある人情劇だからだ。政府の移民政策に一言ある訳でも、途上国からくる人々を憐れんだりする訳でもない。お腹を空かせて困っている少年を助ける、ただそれを当然のこととしてやっている。実社会ならいろんな要因が決断を弱らせるはずなのに。夫に本当の病状を告げない妻も自分を曲げない強い人。この映画で憎まれ役の刑事だって、かつて逮捕した男の妻を気遣うやさしさをみせる。世の中って人の善意で救われる。ストーリーは特にひねった展開がある訳ではないし、これを予定調和と評する人もいるだろう。だけど、エンドロールが終わった後の、ほっとする気持ちは予定調和だったのか?予想していたことだったか?。それは違うはずだ。世間でエンターテイメントとさせる映画たちとは、まったく違ったものであることにきっと安心したはずだ。

カウリスマキ映画を僕は数本しか観たことがないけれど、そこで使われるロックミュージックは特徴ともいえる。「過去のない男」では、記憶喪失の主人公がジュークボックスの前でロックを語り、「レニングラード・カーボーイ・イン・アメリカ」はポールシュカポーレしかできなかったバンドがロックやカントリーを習得するのが楽しかった。「ル・アーブルの靴みがき」でもそのスピリットは同じ。資金集めの為に地元のロカビリー歌手にチャリティ公演をお願いする素敵な場面が出てくる。苦しい現実社会をニコリともせずに生きている名もなき庶民を描く監督は、そんな庶民が愛する音楽を小道具として使わない。ヴィム・ヴェンダースよりよっぽどロックがわかってる人かもしれない。ある意味では。

僕が映画館に入るとき、ちょうど入れ違いで出てきた老夫婦がこんな会話をしていた。
「いい話やったね。」
「バカなアメリカ映画観るのとは違うな。ほんっとにいい話だった。」
見え透いた人情話をウリにする日本映画とも違う。こういう映画が本当に心を癒してくれる。
ミク

ミクの感想・評価

5.0
現世で生きていくには希望も持てず悲観的になってしまいがちだけど、こんな優しさもあるはずだとヒカリが見えてホッコリ。赤い花一輪だけでもお家に飾ったら、何かが変わりそう。

大衆の中だと埋もれて見えなくなるような人でも、一人一人にスポットライトが当てられ、それぞれが人生の主役であり、輝いてる。年を重ねてるからこそ、感じられる感性がなんか羨ましく思えた。

緻密に作り上げられたシーンの連続で、心地よくいられる至福の時間。その合間に、お金盗む場面や警察から逃げる場面のキュートで雑な演出が愛らしい!

リトル・ボブの格好良さに星満点!
vanilla

vanillaの感想・評価

4.0
己の良心に従って善いことをしましょうと思わされる
料理が雑いよねぇ…
ouch128

ouch128の感想・評価

-

このレビューはネタバレを含みます

2018.11.04

グッときた作品。どこまでもあたたかい映画だった。

徹底的に無駄を省いた構成と脚本で淡々としてるのに、人間味が凄く滲み出ていた。
終盤の希望に向かっていくシーンも感動したな。ハッピーエンドも悪くないじゃないか。格好良かった。
RyotaI

RyotaIの感想・評価

4.4
ル・アーブルという街で靴磨きをするマルセル・マルクスとその妻アルレッティ・マルクス。彼女は彼に対して物凄く献身的で愛情に溢れる。
冒頭辺りの家でのシーンで、光の具合がどうにも不穏に感じたから、彼女が何か裏のある人物なのではと思ったが、そうではなかった。ただ、彼女は病魔に侵されていた。不治の病で、治るのは奇跡に近いと。それでも彼女は主治医に頼んで、夫にはすぐ治るように伝えるように言う。

そんな時、夫のマルセルは難民の少年に出会う。そして、彼はその子を匿ってやる。行方不明になった少年を見つけ出すため、新聞は「少年 逃亡中」という見出しで報じる。

登場人物たちは無表情でどこか冷たい印象を受けるものの、皆が内に温かい心を持っており、非常に豊かな気持ちにしてくれる。

出来過ぎていると言われても仕方がないようには思うが、ラストシーン、この物語の結末が好きだった。
底辺で生きる人たちが起こす奇跡の物語。
でも彼等はいまの世の中は間違っているとか、社会を変えようとかいう意識は皆無。ただ、迷いこんだ困った子を助けようという気持ちだけ。そんな純心な思いが小さな奇跡につながる。
カウリスマキの映画はリアリティということではかなり低いけど、演出や演技を極力廃したからこそ、逆にこの映画が「物語」なのだと認識させられる。そしてその独特の空気がえもいわれぬユーモアを醸し出し、観るものを引き込む。
ym

ymの感想・評価

3.8
この監督の映画は、笑い声がなく淡々としてるけど、みんな善意の人で、愛おしい。
そして、全てのシーンが画になる。
タイトルバックも、素晴らしい。
けんざ

けんざの感想・評価

3.7
結構最近に作られた映画なのに、映像と音楽で織りなされる独特な雰囲気に飲まれて、何十年も前の映画を観ているような気分になる
フランス映画の良いところはどんな内容であってもジメジメしてなくてカラッとしてるところ
だからこそあのシンプルな終わり方でも際立って印象に残るんだと思う
登場人物たちの感情の起伏がほとんどなかったから不気味でさえあったけど、それがこのヒューマンドラマをより現実的にしてるんだろうな
市井の人々の善意にほっこりする良作。
格差社会でいえば下辺にあたる靴みがきのマルセルが、彷徨えるイドリッサに手を差し伸べる姿にふと良心を突かれる。はたと間違えば美談にしてしまいそうな話だけど、一切洒落臭さを削ぎ落としたところに魅力がある。
逃亡者にテロリスト容疑をかける緊迫感を思えば、市民と難民の間にはかなりの温度差があるはず。けど、そんな風潮に対する監督なりの考えなのか寓話めいた理想なのか、この映画の切り口が優しくてあまりに「こうだったらいいな」に近くてじんわりくる。
個人的にこの映画、何回観ても飽きないw
ELMATIC4

ELMATIC4の感想・評価

3.8
現在でも各国がどのように対応していくか悩んでいる移民問題を扱っているが、この映画がどの時代を切り取っているかが全くわからない。「テロ」という単語が登場し、新聞には「アルカイダ」の文字が躍る。通貨もユーロで、携帯電話を持つ人もいる。けれども、どの時代の話かがわからない。画面に映るのはひと昔前のノスタルジックな物ばかりだ。

もしかしたら、話を動かす人たちはどの時代にも生きていなくて、ただただ自分に正直に生きているだけなのかもしれない。
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