たく

ル・アーヴルの靴みがきのたくのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
4.5
モネの名画、『印象、日の出』で描かれたル・アーブルの港が、今では不法移民の問題を抱えているんですね。

港町の一つの季節、移民の子どもを抱えてしまった街の人、警察、入管の人たちの暮らしに起きたさざ波を通して、大きな国際問題が、わたしたちの暮らしに降りてきた時に、一人一人がそれとどう向き合ったらいいのか、そんなことを考えさせてくれる映画だ。

賢い妻と、慎ましい暮らしを送っていた主人公のマルセル、何もない日常の中で、妻の入院と不法移民の子を匿うというふたつの〝大事件〟を一度に背負ってしまう。

その事件に向き合うマルセルの姿は、あわてず騒がず、だが、とても熱いのである。
病室の妻には一輪の花を。
難民の子にはパンと英国に住む母親の居所情報、そして渡航のためのお金を…。
あくまでも慎ましやかな生活の延長上に、さりげなく冒険をやりとげてみせるのだ。

将来、会社人間を終え、小遣い稼ぎをやって生きる老後に、こんな風な泰然とした度量を持ち続けて、起きるかもしれない〝事件〟に対処しながら生きられたらどんなに素敵だろう。

もう一つ、芸術の地、ル・アーブル舞台の映画に相応しく、青や赤、黄色など、色彩の豊かさが映画を魅力的にしている。
たく

たく