ぷかしりまる

メルビンとハワードのぷかしりまるのネタバレレビュー・内容・結末

メルビンとハワード(1980年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

観終わってから、じ〜んと愛おしい気持ちが続いている。
主人公は貧乏暮らしの中、真面目に働く誠実な心の持ち主だが、不条理ばかりに見舞われる。でもパートナーが偶然得た大金を自分の憧れだったランボルギーニとフェリーで使い果たしちゃったり(これは投資なんだ…!って、な訳あるかいッ)、サンタの改造マッハソリという自作曲を助手席に載せた怪我人(実は大富豪)に無理矢理歌わせたり(そのくだり面白すぎる)抜けてるところもある。
そして時々予期しないことが起こって、幸運が舞い込んでは、結局振り出しの位置に戻っている。離婚してよりを戻してまた離婚したり、多額の遺産を得たと思ったら相続できなかったり。作中のセリフにもあるように、c’est la vie(それが人生) ということなのだろう。主人公は頑張ってもぐるぐると8の字を描いているけれど、その中でお金や名誉という儚い幸福の条件に左右されない、人との交流や体験(その事実は過ぎ去っても決して無くならない)に価値を見出し満足していて、とても素敵な人生観だった。そしてこの作品が実話に基づくというのも驚きだ。事実は小説よりも奇なり。
心情や無駄な過程をばっさり切り捨てることで、観客が没入できない乾いた印象もあるけれど、人生の目まぐるしさを遠くから見つめて、そしてまた新たな経験(シーン)に移る感覚がとても心地よかった。
賞金か挑戦(門の番号を選んで当たると更なる賞金がもらえる)かというテレビ番組に、必死になって「1番!」「いや絶対2番!」とか言い合ってる家族の姿が映されるところ、大好きだった。歴史の1ページにさえ残らないような些細な、でも見覚えのある姿だったから。そんなの言い合っても自分が貰えるわけじゃないし、何もなるわけじゃないのにな。でもそういう自分以外の出来事に一喜一憂するのは、映画を観る観客の姿そのものでもあると思った。

追記
私が死んだらお世話になった人たちにこのビデオを自動的に送る設定でもしようかな