柏エシディシ

メルビンとハワードの柏エシディシのレビュー・感想・評価

メルビンとハワード(1980年製作の映画)
3.0
グッチーズフリースクールさんのアメリカ映画特集で観たくて観逃していた作品。まさかのRepliseで。ありがたや!
同特集「愛されちゃってマフィア」でもジョナサン・デミには驚かされたが、本当にまだまだ汲みきれていない魅力がこの映画作家にはあるのだ。もっと観たい。
勝手にメルビンとハワードという人の珍道中ものと思っていたら、2人の交歓は序盤におさめ、TVの再現ドキュメンタリーを彷彿とさせる「ホントにあったちょっと可笑しなお話」であった。
ハワードって"あのハワード"なのね!
しかし、これがまた、かわいくも愛おしい。
本作でオスカー獲得のメアリー・スティーンバージェン(日本ではBTTFのクララでお馴染み)の愛らしさが象徴的だが、なんとも人間を人間臭く描くのがジョナサン・デミは本当に巧み。
たぶん、同じ題材で他の監督が撮ったら、こんなにもキュートなお話にはならないんじゃないかな。
もちろん、音楽が効果的に使われていて、例のオリジナルソングのくだりも最高だけど、やけくそ気味のクリスマスパーティーのシーンも良い。
実際の出来事にかなり忠実であるという終盤の展開はある意味"映画的"な安易なクライマックスではなく、人生のほろ苦さを感じさせるけれど、メルビンの「それでもいいじゃないか」という鷹揚とした微笑みに、なんだかこちらが勇気づけられる気持ちになる。
いろいろ本作の背景を調べてみて、冒頭の荒野のバイクシーンがポールトーマスアンダーソンの「ザ・マスター」に影響を与えた事を知って、なるほど、と。
確かに、このテイストはPTAの作品に通じるものだ。
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