doraco

ルートヴィヒ 完全復元版のdoracoのレビュー・感想・評価

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
4.5
2016.06.09
恵比寿ガーデンシネマ
(ヴィスコンティと美しき男たち)
デジタル修復版

途中10分の休憩を挟んでの237分、眠くなるどころかスクリーンに目が釘付けにだった。
豪華すぎて目が足りない。
実は若いころに銀座文化辺りで観ているが、その時は3時間版の「神々の黄昏」だったような…。
それを観てドイツへ旅することを決めたものだったが、当時の記憶では国庫を使い切って豪華なお城を建てまくり、精神を病んで死んでいった悲劇の王さま、といった印象だった。

今回の鑑賞で、戦争を嫌い芸術で国を豊かにしようとするルートヴィヒの想いが最初のシーンから描かれていて、政府とも折り合いをつけながらバイエルンの誇りを保とうと苦心する姿があることに気づく。
国民はそんな王が大好きで、近習にも慕われ、軍もまた味方しようとしてくれる(大佐ががんばる)。
けど、政治の中心ミュンヘンには戻りたくない王。

ヘルムート・バーガーの気品ある仕草や誇りの高さをうかがわせる演技が素晴らしい。
印象的な眼力と、後半に見える虫歯の黒さの対比が、正常ではない様子を匂わせていて胸のあたりが重くなる。

ロミー・シュナイダーのエリーザベトも凛としていてとても美しい。
オットーも観始めて思い出したが、弟の可愛らしさと精神を病んでしまった後の悲劇的なやつれ加減。泣けてくるほど上手い。
前に観た時に一番印象に残ったのはこのオットーだった。

大人になってから観たルートヴィヒは、国王のあまりにも気高く孤独な物語だった。
同性愛者としての官能シーンは、ヴィスコンティ監督のヘルムート・バーガーへの愛情だと受け止めておく。
doraco

doraco