BOB

チャーリング・クロス街84番地のBOBのレビュー・感想・評価

3.8
ニューヨークで暮らす古本好きの女流作家と、ロンドン・チャリング・クロス街84番地にある古書店の店主による、実話(1949〜68)を基にした文通ラブロマンス。

"All mankind is... one volume; when one man dies, one Chapter is not torn out of the book, but translated into a better language; and every Chapter must be so translated; God employs several translators; some pieces are translated by age, some by sickness, some by war, some by justice; but God's hand... shall bind up all our scattered leaves again, for that Library where every book shall lie open to one another."

隠れた(?)名作。珠玉のラブストーリーとはまさにこのことかと。こんな素敵な映画に出会えたことに感謝したくなる。

人生とは出逢いと別れの繰り返し。『街角 桃色の店』ではないが、通信手段が限られていた時代ならではの、ノスタルジックで品格のある心温まるヒューマンドラマ。SNS全盛期を生きる現代人にこそ、手書きの手紙が持つ優しい温もりが心に染みるのではなかろうか。

惜しむらくは、自分が文学に精通していなくて、会話の内容がいまひとつピンとこなかったこと。文学好きなら生涯の1本になっていた可能性も大いにある。

直接会うことはないが、文通を続ける二人。グッと来たのは、劇中でたった一度だけ、カメラのレンズを通じて、直接会話をするシーン。物理的な距離を超えて、二人の心が密に通じ合っていることを印象付ける映画ならではの巧い演出だった。

古書店の雰囲気やイギリスの古い街並みが魅力的に映る。

肉の缶詰を見たマダムが頬を緩ませるシーンが堪らなく良い。見ているこちらまで微笑んでしまう。

名優たちが見せる抑えの効いた確かな演技を堪能。W主演は『エレファント・マン』以来の再共演となったアン・バンクロフト(『奇跡の人』『卒業』etc)とアンソニー・ホプキンス。アンソニー・ホプキンスの妻役には、舞台、テレビを経て映画界へと活躍の場を広げ始めた頃のジュディ・デンチ。

時代背景。チャーチルの首相再就任、エリザベス女王の戴冠式、ドジャース、ビートルズ、学生デモ。

"I'm a poor writer with an antiquarian taste in books."

7
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