菩薩

ポゼッションの菩薩のレビュー・感想・評価

ポゼッション(1981年製作の映画)
5.0
なんじゃこりゃ!→なんや貴様!!→なんでそうなんねん!!!の見事な三段落ち、目の前の狂気は加速し続け、それに身を委ねてるうちにあっという間に2時間が経過する。

単なる離婚劇と侮るなかれ、中盤以降この作品からは全ての説明責任が取り払われていく、つか無理。ATフィールドは誰もが持つ心の壁、その為本来は人が人を所有することは出来ないが、時たまそれをせずにはいられない人がいる。そんな者に神は悪魔の化身を授ける、この辺りやってることほぼエヴァね。理想は追い求めているうちが華なのであって、手に入れてしまったら案外つまらないもの、そして強すぎる理想と理想(=思想)とは必ず衝突するものである。

監督本人の私怨が色濃く反映されている作品であるが、その背後には遥か遠くとなり果てた祖国への憧憬、絶対に超えられない男女の壁、資本主義vs共産主義と、あらゆる残酷な現実が見え隠れし、度々映されるベルリンの壁はあらゆる分断を意味する。

絶対に開けてはならないパンドラの匣、その蓋が解き放たれる時、世界は再び地獄の業火に包まれる。おそらく『キャッツ』(観てないけど)以上に、己の精神の根底に巣食う眠れる性癖が呼び起こされる危険性がある、その扉を開けてはならない…その扉を開けては…。

もう全部のシネコン全時間帯『ポゼッション』でポゼッションしちゃえばいいのに…。そうすれば世界は変わる、いや、終わり、あらゆる所にピンクの靴下が咲き誇る事となろう…。「この世の映画一本だけ自分が撮った事にしていいよ」なんて悪魔の囁きが聞こえて来たら迷わずこれを挙げる。なんでこんな面白い映画あるのに誰も教えてくれなかったの…?ここに至るまで約3000本、ちと遠回りをし過ぎた…。オールタイムベスト級、でも絶対に誰にも薦めたくない。完敗です。
菩薩

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