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愛する人のodyssのレビュー・感想・評価

愛する人(2009年製作の映画)
3.0
【アネット・ベニングは魅力的だけど】

アネット・ベニングの魅力が味わえる作品です。もともと彼女のファンである私ですが、この年になっても魅力を保っているのには驚いてしまいます。50歳を過ぎ4児の母でこれほど男を惹きつけるとは、うーむ、うーむ。

とはいえ、この映画、脚本的にはやや物足りない感じが残ります。例えばベニングはミドルティーンで出産してから今までどういうふうに生きてきたのか。映画では同居してきた老母に死なれ、新しい男との出会いがありますけど、十代での出産から三十数年たっているわけだから、途中でも男との付き合いがあったと想像できるのですが、暗示的に触れられるだけで筋書き上はほとんど重きをおかれていない。しかし、この間の三十数年とは十代半ばから五十歳くらいになるまでの、女としては一番重要な時期のはずです。男関係であとに残る事態が何もなかったというのは不自然でしょう。

同じことは娘のナオミ・ワッツにも言えます。彼女の男との付き合いはキャリア・アップのためなのか一時的な快楽のためなのか、或いはその両方なのか。別にどちらでもいいとは思うものの、少なくとも彼女の男との付き合い方を見ていてあんまり「なるほど」という気持ちにはなりません(特に隣人との関係)。

また、思いがけず妊娠してしまってからの人生行路も、キャリアの問題を考えるなら(キャリア第一主義だからこそ未婚でなおかつ不妊手術をしていたわけでしょうから)もっと悩まないといけないはずで、その辺の描写が足りない気がします。

もう1人、ケリー・ワシントンを中心とする養子のごたごたは、現代アメリカの養子事情を知るという意味では面白かったのですが、筋書き展開はややご都合主義的で、他の二人と絡ませるために作られた人物とエピソードかなという印象が残りました。

むろん、人間の生き方は第三者から見て納得づくである必要もないし、矛盾やエゴを抱えながら生きている人間が大多数でしょう。そういう意味ではこの映画も人間のあり方を一つ描いて見せているとも言える。しかしその描写が観客の心奥に触れるかどうかとなると、少し足りなかったのではないかと思います。
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