最初はつまらないと思いながら見ていたが、意外に深い！中3女子の妊娠に関する諸々の場面など目頭が熱くなった。
たとえお決まりの文句に御涙頂戴の演出ときても、ヒューマニズムを貫いていれば心揺さぶられる。
長門勇がいい味出してる、『道場破り』でこの素晴らしい俳優さんを知ったが、ユーモアとペーソスを兼ね備えた人だ。
そして小畑絹子、聡明そうな顔と声が良い！エロキューションがたまらない。

妊娠のため自殺を計った中3女子が産婦人科に運ばれて来て、スクープを嗅ぎつけた新聞記者も取材に来る。記者は、乱れた性道徳に対する警鐘、少なくとも年頃の娘を持つ家庭へ注意を促すことになると主張し、これを記事に載せることが新聞としての義務だと言う。しかし、長門勇は「私もね、医者として患者を守ってやる義務があります。世間に対する見せしめもいいでしょう。だがそのために一人の哀れな少女が犠牲になってもかまわないって言うんですか」と答える。「どうやら先生は新聞の使命を誤解しとるらしい」と引き退らぬ記者。「僕はねマスコミの暴力を…恐れとるんですよ」翌日、新聞にはデカデカと記事が載り、怒り落ち込む長門勇。彼を慰めつつ女生徒の今後を同じ女性として親身になって考えている小畑絹子、その二人の会話。
「僕はね、決してスタンドプレイでやったんじゃないんだよ。それをさも、売名の手段のように書きやがってさ」
「先生ってあんがい気が弱いのね」
「気がやさしいと言ってもらいたいね。とにかくマスコミは怖いよ、まったくねぇ」
ユーモアの中に真剣で真面目な問題提起がある。
小畑絹子の科白「先生は患者さんの体の治療はするが、心の悩みは放っておくんですか！」これは泣かせる。

冒頭は「優生保護法があるから中絶してよ」や差別語連発だったりするが、映画が進むにつれて感動ものになっていく。期待していなかった作品だが、本当に観てよかった。コメディは奥が深い。