風の谷の今鹿

もののけ姫の風の谷の今鹿のレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
5.0
自然と人間の対立を描きつつも、どちらかに傾倒しすぎることがない。自然側からすると、どんどん切り拓かれていくことは納得がいかない。だけど人間の言い分からすると、それを生業としている人もたくさんいて、だから今更辞めることなんて絶対にできない。双方の言い分に間違いや偽りがないからこそ、譲れない。そしてぶつかってしまう。何千年も前に自然と共生していた時代と今とでは、何が違うんだろう、どこで間違えてしまったんだろう。この作品の観賞後には、本当に沢山のことを考えさせられます。

ただきっと、パヤオが1番に伝えたかったのは「自然との共生とこれから」なんて命題じゃなくて、「生きるとは何か」ってことだったんじゃないかなぁ。自然と人間どちらの立場かってのには作品を通しての一貫性がないけど、「生きる」ことへの姿勢は首尾一貫徹頭徹尾なわけで。絶望的な状況の中、運命に抗い自ら赴くことを選び村を立ったアシタカ様や、オトキさんの「生きてりゃなんとかなる!」っていうのがその良い例。人間でも動物でも自然でも、生かされてるってのはもの凄い尊いことなんだよ。この『もののけ姫』って作品が発表される前年、日本における自殺者数がもの凄く多かったらしくて、、、。それを受けてパヤオは、ポスターのキャッチコピーを「生きろ」って単純だけど深い3文字に設定したんじゃないかなぁ。

小学校の授業とかで子供に観賞させるべき一本だと考えます。どんな歳の子にでも、この作品に注がれたある種の情熱は伝わると思う!!!そして今鹿のように、アシタカに心を奪われる幼児も多数見受けられることでしょう、、、。最後に、今作1の名言を添えておきます。

「生きることは誠に苦しく辛い。
 世を呪い、人を呪い、それでも生きたい。」