網野善彦の理論に則っているであるとか、天皇制との関連であるとかはすでに多くの論者が筆を尽くしているから割くものと済ましても、そのような図式に回収されない偏執のような狂気こそ核心であるようにおもう。ミリタリー愛好家の面も環境愛護の精神もひっくるめて、映画監督としての宮崎駿には主張や欲望をわざわざ否認するというプロセスがいっさい見受けられず（理性の延長線上としておこなわれている雰囲気がある）、そこにすごみをかんじるし一種の可能性すらをもかいまみえるのではないか。個人的には『ナウシカ』はそこまでとくべつな作品ではなくて、好みで言うんなら軍配はこちらに上げられるかもしれない。
