似太郎

もののけ姫の似太郎のレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
4.3
【神々との闘い】

自然と人間の共生とカタストロフを綴った作品で『風の谷のナウシカ』のテーマ性をさらに押し進めた印象を受ける宮崎駿監督の力作。

片腕を負傷し呪われた運命を背負った主人公アシタカとオオカミ少女のサンのピュアな絆の描き方が宮崎駿らしく『未来少年コナン』から全く変わっていないアプローチだと思う。

小学生で観たときはあまりに監督の「生きろ!」という監督の主張…というかメッセージ性がやや鬱陶しく感じたが、そういった一種の説教臭さは宮崎駿の師匠、黒澤明に通底する感じ。やたら吠えてる印象。

オオカミ少女のサンの造形は近藤ようこの漫画『水鏡綺譚』に出てくる狼に育てられた孤独な少年ワタルを彷彿とさせる。どこか世界観が和風で土臭い白土三平辺りのムードが強めである。

これまで東欧とか英国とかイタリアとかヨーロッパを舞台にすることの多かった宮崎作品が敢えて【日本色】を出した記念碑的作品でもあり、台詞回しが直接的でクサイのを除けば完璧なアニメーションだったと思う。

宮崎駿にしては珍しく暴力描写がハードで内容も暗い。子供向けを回避した印象があり、完全に大人向けの作品。作画の精密さはさすがジブリ!といったクオリティだった。サン役の石田ゆり子の吹き替えは正直微妙だが、この際大目に見ましょう。
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