とむ

もののけ姫のとむのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
4.0
森林を破壊し、動物たちの命を奪いながら社会生活を営み生きている人間たち。その行いに怒り狂い、化け物となって人間に襲いかかり戦いを繰り広げる神の化身としての動物たち。それと同時に人間同士の争いも勃発する。

自然は失われても人間がいなくなればいずれまた大地を覆っていく。人の世は愚かなもので、どれだけの年月を重ねようとも決して争いが絶えることはない。

前途にどれほどの苦しみが待ち受けているのだとしても、それぞれが与えられた生を頑張って生きていくほかに道はない。そうやってここまで人間の歴史が続いてきたのだから。

今見返してみるとそんな感慨が心に浮かんでくるような重苦しく壮大な物語ではあるけれども、自分が最も強く胸を打たれたのは、エボシ御前が介抱していた重度のハンセン病患者がアシタカに語りかけた台詞だった。
「生きることはまことに苦しくつらい。世を呪い人を呪い、それでも生きたい」
当時十代半ばだった自分は、この言葉が胸の中に留まっていた形にならない思いを代弁してくれているように感じて泣いてしまいたいくらいだった。
一番胸の奥深くまで沈み込んでくるのが、死を待つのみの身である人物が漏らしたこの台詞であるという事実は、これからもずっと変わることがないのかもしれない。
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