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もののけ姫のこのネタバレレビュー・内容・結末

もののけ姫(1997年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

「アシタカせっ記」となるはずだったこの映画。せっ記は監督の造語らしく、史実には残らない人から人へ言い伝えられた物語という意味が込められてるみたい。

アシタカは人にも森に住むもののけにも語り継がれる人間と、観た後に思わせてくれる素敵な主人公で好きです。

村の者たちを助ける為に、タタリ神になって死んでしまうやもしれん呪いをかけられ、村を追放され旅立たなくてはならない。余命を叩きつけられた英傑に見送りもない旅立ちは、切なすぎる。美しい背景と音楽だけがアシタカの背中を押して、長い長い旅路を1人と1頭でしているのだと思うとジーンとくる。
タタリの根元のエボシを恨むことも、自分の運命を呪うことも、ザワッとする髪を抑えて「人と森、双方が生きる生き方」を問い続ける、アシタカは強い人だ。曇りなき眼で見て、そして答えを探ろうとする様は生きていく勇気を与えてくれる。

アシタカが言葉にせずグッと気持ちを堪えるのと同じように、登場人物は本心を隠して、言葉と裏腹な行動が多い。

モロは人間が作ったであろう巨石文明の名残を住処として使うし、エボシは崖に落ちた者や猪との戦時の爆破作戦を山上で冷徹に見捨てるシーンがあったりする。

ラストの荘厳な森が消えて、エボシの言った人が住みやすい豊かな里山に変わっていく様はモロや乙事主以降は神として崇められ言葉を話す動物はいなくなるかなと思うと寂しい。

人間であることは人々の笑顔や想いに心打たれる美しさがあると同時に、欲のために森を神を殺す醜さがあるという表と裏を忘れてはならない気がする。
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