Genichiro

もののけ姫のGenichiroのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
4.6
これは子供の時に見てもわからんわ。ハイコンテクストすぎる。室町時代とかそのあたりの話だったんだな。(アシタカは蝦夷の一族。幕府が形骸化してるのでそこらで村を襲う野伏がいる。エボシはベンチャー社長。)千と千尋における「湯屋は実はソープランドで〜」みたいな記号ゲームは非常にわかりやすく、コンセプト自体も射程の近い恨み節みたいなもの。それに比べると歪んだ宮崎駿思想を大衆向けにパッケージングして提示してみせた今作はほんとに絶妙なバランスの作品だったと分かる。アニメ映画として各アクションシーンの配置、尺など、いやー見事なものです。オープニングの木が倒れるシーンからして人が描いてるものが動いてることの実感でゾワゾワする。良いシーンなんて選びきれないけど、日本のアニメ映画史に残る名シーンことサンとエボシを仲裁する箇所は本当に劇場で観れて良かったと思える。あと人間の動きのロジックに則った、もしくはそれを裏切る描写が本当にうまい。シシ神に治療されたアシタカが目を覚ます→ヤックルが近づいてくる→ヤックルを撫でると腕のアザが広がっていることに気づくという一連の流れとか細かいところの動きのロジックがしっかりしてる。なので後半の神秘的な大カタストロフが説得力を持ってくる。自然とともに生きるなんて幻想にしか過ぎなくて、自然と人間は常に戦争状態なんだということは大人になれば嫌というほどわかる。でもそういった幻想はフィクションの中でしか抱けないものだし、思考のチャンスを与えることは創作物にできることの一つではないだろうか。今でも見られるべき作品だと思う。千と千尋以降の異常なバランスも好き。
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