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セブンス・コンチネントのriyoのレビュー・感想・評価

セブンス・コンチネント(1989年製作の映画)
4.2
”第七の大陸”

鬱映画の監督と名高い
ミヒャエル・ハネケ監督のデビュー作で、
ある一家の日常を切り取った
三部構成の映画である、
「セブンス・コンチネント」。

全体に散りばめられた不穏な空気。
繰り返される日常のルーティーンを
観ているだけで、それを思わせるだけの
退屈な演出。
冒頭から何度も繰り返される
洗車機のシーンと、TVの砂嵐。

そして感情と噛み合わないような、
不自然で長い暗幕のカットの多さと、
不自然なほどに
被写体(父、母、娘)の表情から外れ、
日々を過ごす彼らの「行動」のみ映される映像。

物語の後半にある出来事が起こる。

それは彼らが人生に背く姿、
または人生の心理を掴んだような行為。
そのシーンですら、彼らの表情はわからない。
狂ったように笑いながらなのか、
またはわめくように泣いているのか。
ただ一切の感情を排除した行為のみが映し出される。

感情を排除した
この映画のタイトルである
「セブンス・コンチネント(第七の大陸)」は、
地球にある六大陸ではない、
7つ目の大陸を指すという。
楽園だとかあの世だとか言われるものを
想像させるこのタイトルに、
彼らは向かっていったのだろうか。

それでいてこの映画の登場人物に
好き勝手自分の思いや考えを乗せて、
価値観や意味を自ら作って語ることに
人間の身勝手さも感じる…。
(この作品で起こる全ての行動の動機が
まるで分からないようになっているから。)
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