みおこし

クレイジー・イン・アラバマのみおこしのレビュー・感想・評価

3.9
1965年夏のアラバマ。「女優になりたいって言ったらバカにされたから、夫を殺したの」。7人の子供を母に預け、切断して冷凍保存した夫の頭部とともにハリウッドに向かうことにした主婦のルシール。甥にあたるピー・ジョーの視点も交えながら、ルシールの波乱万丈の逃避行が始まる。

オシャレなジャケットと、この常軌を逸したあらすじに惹かれて鑑賞(笑)。あの衝撃的な告白に始まり、ナンシー・シナトラの"These Boots Are Made for Walkin'"が流れるオープニングから痺れました〜!
快活で賢いけれど、どこかブッ飛んだ女性を演じたら右に出る者無しのメラニー・グリフィス。監督はご主人のアントニオ・バンデラスなので、彼女の撮り方を熟知しているんだなぁと。
ピージョー役のルーカス・ブラックのあの精悍な顔つき、憎たらしすぎるミートローフの怪演は言わずもがな、相変わらずダンディで紳士的なロバート・ワーグナーと、クセたっぷりだけど人情味溢れる判事を嬉々として演じているロッド・スタイガーという2人の名優の晩年の姿。文字通りの神がかったキャスティングで、他の脇役含めてもそれぞれが見事にハマり役でした。

お察しの通りブラックコメディの要素もあるのですが、決してそれだけで終わらない人間ドラマもありつつ。本作は2人のとある対照的な人物の死を軸に進むのですが、この2人の殺害を正義とするか、悪とするかという問題は、深く考えれば考えるほど難しい。ピージョーとテイラーにまつわる一件は、当時のアラバマにおける黒人差別の問題に触れていて興味深かったです。
でも、ルシールのエピソードがすごく面白かったので、もっともっと彼女のストーリーを掘り下げて欲しかったなという思いもあって正直必要だったのかは疑問...。

最後の裁判のシーンは手に汗握りましたが、まさかの評決にズッコケました。でもロッド・スタイガーが素敵だったから良し!(笑)でも陳述の中の「精神的に殺された」という部分、肉体的な殺人以上に裁くのが難しい問題だし、同じように苦しんでいる人は現実にもたくさんいると思うとすごく考えさせられるセリフでした。

でも最後まで飽きなかったし、とにかく登場人物がみんな魅力的。個人的には大好きな一本になりました。ラジー賞にノミネートされていたようですが、本作で掲げられている正義と悪の問題と同様に、本作の評価をどうするかは人それぞれ!私はこのブッ飛び感大好きです!(笑)
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