ララン

スペシャリスト 自覚なき殺戮者のラランのレビュー・感想・評価

3.4
アイヒマン裁判のドキュメンタリー。
ハンナ・アーレント『イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告』を踏まえて編集。

上から命令されたから業務として行っただけ、責任は私にはない。
これがアイヒマンの一貫した主張。

題名がなるほどと言ったところ。
逮捕当時、どんな外道なのかと思われたアイヒマンの見た目はあまりに平凡で、逆に世間を驚かせたと言う。
裁判での答弁もまさにお役人さん。
規則や命令に忠実で、言われた事を正確に持論を持ち込まず疑問も持たず、ただ淡々と仕事をこなす。
過去の事例や経験から業務方法の提案もできるし、従順で温厚で功名心から張り合うこともない。
業務遂行に必要な知識と経験に長けた"スペシャリスト"が彼だった。

思考する必要がない=自分の責任がないというだけで、心の負担はなくなり何処までも状況を受け入れてしまえる怖さがあった。
しかもこれって、彼が特殊なのではなくて彼は本当にどこにでもいそうな普通な人なのが怖いところ。
自分で考えるって大事なんだと強く思った。

先にハンナ・アーレントのアイヒマン関連の作品を調べておくと理解が深まります。
ララン

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