半兵衛

絹の靴下の半兵衛のレビュー・感想・評価

絹の靴下(1957年製作の映画)
3.7
映画黄金期に作られたミュージカルとしてのゴージャスな面白さに加えて、出演するフレッド・アステア&シド・チャリシーによるスターのオーラが全編に眩しく輝いており何にも余計なことを考えず純粋に楽しく鑑賞することが出来た。

元ネタがソ連の人を皮肉っていた『ニノチカ』だけに、本作でもそれが炸裂しているが映画製作に携わる主人公を通して商業主義なアメリカ人も結構皮肉っているのでバランスがとれている(でもそんな作品を監督しているのがロシア人なので妙な気分に)。あと中身ではなくカラーや音響など最新技術を前面に出して売り込もうとする映画会社への批判が印象的だけれどあれはスタッフの本音なのか。

アステアはさすがに60近くになっているためダンスは控えめで歌メインだが、それでもキレのある踊りは健在で魅せてくれる。それにシド・チャリシーが後半自慢の美脚とバレエ仕込みの動きを生かした超絶的なダンスを披露するので過不足は感じない。主役二人の息が合っているのもいい感じで、中盤二人が言い合いになっているのに自然とミュージカルになってしまうのが心地よい。

ラストは予定調和なハッピーエンドだけれど、みんなが幸せそうなのでまあいいかと思えてくる。

ちなみに本作のシド・チャリシーはショートな髪型と笑わない顔立ちのためか、ジャンヌ・モローに結構似ている。そんな彼女が服を脱いでストッキングを履くダンスシーンは裸のエロスよりも恋による心の解放が強く感じられて清々しい。
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