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絹の靴下のkyonのレビュー・感想・評価

絹の靴下(1957年製作の映画)
4.0
ロシアの3人組見た瞬間『ニノチカ』を思い出して、よくよく観てみると、なんと『ニノチカ』のブロードウェイ版の映画化!(ややこしい)

ルビッチの『ニノチカ』が好きでたまらないんだけど、ルビッチ版はグレタ・ガルボ演じる全く笑わないロシアの特使ニノチカがいつ笑うのか、という演出が優れていて、酒場のシーンまで本当に笑わない。笑
だから作品宣伝に”ガルボが笑った!”なんて見出しがついていたわけで。

こちらに比べると、ブロードウェイ版はアステアたちのミュージカルがやっぱり見せ場。予算もかなりかけたみたいで、物語ありきってよりはアステアたち役者ありき。

だからこっちのニノチカは最初から微笑んだりもあるから、ガルボより心理的にわかりやすい女性として仕上がっている。

1950年代後半の作品で、面白かったのは作品における、自己批評的なミュージカルシーン。
それは「(今の)映画はシネマスコープでカラーなのだ」と冒頭で歌い踊るんだけれど、アステアも往年のスターの貫禄を見せていて、ギリギリ、スター・システムを感じることが出来る。

あとはやっぱりニノチカがアステアのためにおめかしをするシーン。いわゆる社会主義的な思想から資本主義的な思想に移り変わる皮肉にもなるんだけど、本当に惚れ惚れする。

ルビッチ版では帽子がキーアイテムだけれど、こちらはタイトル通りシルクのストッキングや下着といった女性特有のアイテム。

まだヘイズ・コード下だったから、このシーンをめぐってやっぱり揉めたみたいだけど、結果的に1番肌が露出するシーンは椅子やカーテンで対策することになったとか。

衣装がね、本当に素敵なの!
ヘレン・ローズはイーディス・ベッドと並ぶ50年代を先導した衣装デザイナーなんだけど、ローズの場合ビロードやシフォン、チュール、とか柔らかい素材を使わせると一級品になる印象。

役に合わせてバランスの取り方が上手い。

セクシー女優には派手で煌びやかなドレスやガウンを着せて、対照的にニノチカにはシンプルなグレートーンのスーツやワンピースを。

ミュージカルシーンがあるから伸縮性を考慮したデザインなのも重要。
アステアと最初に仲を深めるシーンのニットワンピース、前から見るとシンプルなワントーンなワンピースなんだけど、後ろのスカート部分を見るとボタンがスリットと共に配置されてて、飾り的なデザインかと思いきや、そのワンピースでダンスするから、足を動かす上でのスリットという意味でもすごく配慮されてる。

横で流し見してた家族が「衣装いいね〜」って言うくらいだから、やっぱり衣装は映画の視覚的言語の一部として機能してるよね。
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