もとまち

くちづけのもとまちのレビュー・感想・評価

くちづけ(1957年製作の映画)
3.8
増村流のボーイ・ミーツ・ガールはカラッとしたドライな味わい。湿っぽい抒情が無く、男と女の能動的なアクションによって物語は小気味良く進行する。出会いから口づけまでたったの二日間。純愛の起承転結が70分間にキッチリ詰まっている。ふたりの馴れ初めとじゃれ合いを、瑞々しく描いた一日目が特に素晴らしい。ふたりはとにかく走る。留置所でめぐり逢った時点で、ふたりは既に突っ走っている。走らなければ、愛は始まらないからだ。意地でも逃げる川口浩と、意地でも追いかける野添ひとみ。この意地の衝突が生み出すドラマが、増村作品はとにかく面白い。競輪場→レストラン→海水浴場とスピーディにロケーションも変化。ふたり乗りバイクの圧倒的な疾走感、酒場でのピアノと歌、一つ一つのシークエンスを丁寧に作り上げてる。平凡な物語を、平凡じゃない演出で撮るって多分こういうこと。
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