DJLastChristmas

プレイタイムのDJLastChristmasのレビュー・感想・評価

プレイタイム(1967年製作の映画)
4.0
モダニズム建築・都市について示唆的な一本。ガラスの透明性や反射を敏感に捉えている。また『ぼくの叔父さん』同様、舞台装置としての建築・建具・家具の利用が徹底的に考え抜かれていて、建築を考える上でのヒントも沢山詰まっている。

引きの画でアクソノメトリック風に斜めからオフィスブースを俯瞰し、小指ほどのユロが画面いっぱいに動き回りながらピタゴラスイッチ的にドタバタが展開していく流れは大好きだし、ガラス越しにカウンター業務をこなす人の左右に動き回る椅子の下部が見えている、などいちいち視覚的好奇心が刺激される。

モダニズムがもたらしたテンパードアの透明性に当時の人々が慣れていない様を表現するように何度もドアに頭をぶつけるシーンが出てくる。ついにユロがドアを豪快に破壊し、ドアマンが取手を空で持ちドアをパントマイムで開閉する様は滑稽かつシニカル。人生で2度経験した、鳥が窓ガラスに勢いよくぶつかって死んでしまう場面を思い出した。

ヒッチコック『裏窓』よろしく夜に(道路を隔てた対面から)複数の窓の中の人々の異なるアクティビティが浮かび上がるのもこちらの視線を意識していてテレビ的・映像的。

反射についてもセンシティブ。横軸回転窓を掃除するおじさんのリズムに合わせて、ガラスにパリの街の反射。そのリズムはバスの乗客の視覚と連動している。直接パリの街を映すことなくイメージの補完として窓ガラスの反射を利用しているのだ。惚れ惚れする。

内装工事終えたてのレストランでのギャルソンや裏方のドタバタっぷりにはゾッとするものがあるが、「『PLAYTIME』のレストランみたいだな...」なんてブラックユーモアを使うことがないようにしっかり仕事をしたい...。

***

ところで、驚くべきことに透明性の高いミース風の近代高層モダニズムビル群は、すべてこの映画のために建設された舞台セットだという。ディズニーランドのように視覚効果を利用し、数階程度しかないビルを20階建てのように見せかけている。
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